2017年3月6日月曜日

東大2次試験(2017): 問題5(その1)

問1 直線y=ax+bが共通接線であるとき、aを用いてkとbを表せ。ただしa≠-1とする。

高校数学の立場からすれば、判別式を使うのが常套手段だろうが、ここでは微分計算や行列計算を取り込んだ手法を採用して、大学の物理で使う手法にできるだけ近づけてみよう。

まずは、陰関数(x=y2+k)が登場しているので、大学の力学や熱力学でよくつかう微分記号によって微分係数を求めることにする。

C: dy = 2xdx,   D: dx = 2ydy

つまり、微分係数は

C: dy/dx = 2x
D: dy/dx = 1/(2y)

となる。

次に放物線Cにおける接点を(x0,y0)と置く。
このとき、共通接線の方程式は y-y0= 2x0(x-x0) と書ける。ただ、x0は放物線C上の点だからy0= x02+kという関係がある。これを使ってy0を消去すると

 となる。したがって、y=ax+bが接線の表現だというならば、
a = 2x0, b = -x02 + k
 という関係が成立する。この2式からx0を消去して整理すると-4b+4k=a2となる。

Dの接線に関しても同じように計算を進めればよい。が、xとyの交換に関する対称性を利用すると少しだけ「退屈しのぎ」ができる。Dの接点を(x1,y1)とし、上の関係式でxとyを入れ替えた式x=2y1y-y12+kを考えるのである。この式とy=ax+bを比較して, y1を消去すれば, 4ab+4a2k=1という関係を得ることができる。

2つの式を(あえて)行列で表現すると
となる。左辺の行列の行列式は-16a(a+1)なので, a≠0, a≠-1の場合は逆行列が存在して
を計算すればbとkをaを使って表すことができる。計算結果は
となる。ただし、a≠-1, a≠0という条件があることを忘れぬようにしてないと、後でひっかかる。この場合には逆行列をとる前の関係式まで戻る必要がある。

a=-1のときは、Cから求めた条件式とDから求めた条件式が一致して、-4b+4k=1となるが、これ以上先に進むことはできない。またa=0の場合, 接線の形がy=bに限定されてしまう。Cに関してはb=kとすれば良いが、Dに関しては接線は引けなくなる。つまり、この場合は解なし、つまり共通接線はないということになる。
a=-1の場合 (クリックして拡大)
行列や行列式は量子力学や(解析)力学で出てくるので、大学に入る前に2x2行列くらいの計算は習熟しておきたいものだ。(でないと、教えるこちらが大変困る。)

2017年3月5日日曜日

東大2次試験(2017): 問題5(その0)

引き続き、2017年の問題を見てみる。今度は問題5。
問題文はクリックすると拡大できる。
問題4でもちょっと議論したが、この問題でも「対称性」の考え方が利用できる。というより、こちらの問題の方がもっと明示的な形で対称性が見えるので、問題を解く前に、まずは直接グラフ化して、この問題と物理学との関連性を見てみよう。

[対称性について] 
この問題の対称性はxとyの交換に対する対称性である。 放物線CとDはこの交換によって、入れ替わる。つまり、CとDのグラフはy=xに対して線対称の関係があることがわかる。まずはk=4の場合について図示してみよう。
k=4の場合。y=xに対してCとDは対称になっている。

試験問題では、CとDの共通接線を考えることになるのだが、その観点からすると、グラフのタイプ はパラメータkによって分類できることが推測される。上の場合は放物線がy=xと交わらないタイプ。

次は、交わってしまうタイプを見てみよう。k=-3に選んである。
k=-3の場合。
なんとなく、蛾のような蝶のような形に見えるが、共通接線は「羽」の先端に一本しか引けないような気がする。k=4の場合は、なんとなくタスキがけに行けそうな気もしないでもないが、確信は持てない。ただ、問(2)で3本の共通接線...とかなんとか言っているので、この場合なのかもしれない。

こうなってくると、y=xと交じる、交じらない、の中間の場合、つまり接する場合が気になってくる。こういうのは、物理では「臨界点」とかいうときもあるのだが、この問題ではk=1/4の場合がそれにあたる。
k=1/4の場合。
 この場合の共通接線の一つはy=xであるから、共通接線は2本引けることが予想される。そうすると、k>1/4の場合はやっぱりタスキがけの2本と、「羽の先端」に一本と、全部で3本ありそうな気もしてくる。

超流動の研究で、臨界温度Tcというのが出てくるが、臨界値を境に、超流動状態と常流動状態が相転移する。この問題でもk=1/4が臨界値になって、共通接線の本数が変化すると考えれば面白いだろう。共通接線の数は自然数だから、この「転移」は「連続変化」である。が、一応「量子化」されているので「相転移」と呼んでもいいのかも...

この「臨界値」の求めるには、当然ながらy=xとy=x2+k(あるいはx=y2+k)の連立方程式(2次方程式)の、判別式=0を解けばよい。臨界値k=1/4の「4」は、判別式の公式、D=b2-4acの4に由来する(この2次方程式の係数はa=1, b=-1, c=kなので)。

2017年3月4日土曜日

東大2次試験(2017): 問題4(その4)

問(3)まではものの5分から10分ほどで到達できたのだが、問(4)には苦戦した。最大公約数というのは物理ではあまり使わない...というのは言い訳になるので、この辺でやめておこう。

(4) an+1 an の最大公約数を求めよ。
nが偶数でも奇数でも、隣り合う、「パリティ」の異なる2種類の数列要素の間の最大公約数を考えることになるので、考え方は同じになる。従って、nを偶数と仮定して議論を進める。(nが奇数の場合は、議論の中で「パリティ」の異なる成分に入れ替えるだけでよい。)

まず、問(3)の結果から、全てのnにおいて、数列の要素anは約数2を持つことがすぐに結論できる。それはkが偶数の場合の因数1+(-1)k=2に由来する。この「2」はkにもnにも依存しない共通の因数であるから、任意のnに対して、an+1とanの最大公約数の第一候補に挙げられる。実際、n=1,2,3,4あたりまで具体例で計算してみると2が正解らしいことが推測されるし、実際の正解も2である。

気になるのは、特別なnの値、例えばn=n1において、偶然n1に依存するような形で公約数が現れはしないか?という疑問である。もしn1が非常に大きな数、たとえばn1=123456789とかだったとしたら、n=1,2,3,4あたりまで具体例で計算したら2でした、なんてのは無駄な話となる。

n=n1でan1 とan1+1が公約数Lを偶然持ったとする。すると、(2)で得た漸化式a1an = an+1 - an-1 によって、an1+2も公約数Lを持つことになる。つまり、偶然どこかで公約数が偶然変更されるようなことがあれば、それはその後の要素にも引き継がれることになる。つまりn>n1に属する任意のnにおいて、an+1とanの間に、nに依存しない最大公約数2Lが存在することになる。果たして、こんなことがあるかどうか調べてみよう。

まずは2項展開で得た式を見直してみる。ただし、和の部分はkについて偶数だけをとる、とせずにk=2jと書いてj=0, 1, 2,...で和をとるように書き直す。すると

となる。和に関するjの上限値はガウス記号と呼ばれる[n/2]で与えられる。これはn/2を越えない最大の整数という意味を持つが、若干鬱陶しいので、n=2m+1(奇数)のときと、n=2m(偶数)のときとで場合分けする。双方の場合について[n/2]=mとなる。

和の部分を具体的に書き下してみる。まずは奇数の場合(n=2m+1)から。ガウス記号が効いて、二項展開の最後の項は省かれてしまうため、
 となる。各項をよくみると、μが共通因子となって取り出せることがわかる。したがって、nが奇数の場合は
 と因数分解できる。ただしn=2m+1として、
である。初項(最終項)は、μ(ν)のみの2m(m)次式がになっているので、互いに素の場合には(自明な)共通因子は存在しない。

次に、nが偶数の場合は和の部分は二項展開における最高次の項がμに関してもνに関しても取り込まれるので、μとνが互いに素の場合には、新たな(自明な)共通因子はない。したがって、

ただし、n=2mとして
である。

問題ではμ=2, ν=5であり、共に素数である。この場合はNmもMmもともに奇数であることは容易にわかる。(それぞれの最終項は奇数だが、それ以外項はは2の倍数になっているので。)また、2と5は当然互いに素なので、μとνの間に公約数はない。

NmもMmも奇数であるから、もしこれが因数分解できるとしたら、それは奇数同士の積となる。したがって、Nmがたまたま偶数となって、nが奇数の場合の因数2μ=4が公約数になることはない。つまり4が最大公倍数になることはない。最大公倍数は2あるいは2×奇数の形になる。

上で考察したように、 仮にあるn=n1において、たまたま奇数の因数2L+1がNmとMmに発生したとする。しかし、この因数はn>n1でも因数となり続けることも上で確認した。だとすると、NmやMmの中に、mに依存しない共通因数がn>n1において延々と発生し続けることになるが、MmやNmはμとνの多項式であり(μとνは互いに素)、どの項もmに依存した数になっているので、この多項式がmに依存しない因数を含むことはありえない。


2017年3月3日金曜日

東大2次試験(2017): 問題4(その3)

問(2)で、μと√νの部分に分ける考え方を少しやった。また、逆数1/p=qを考えることで、μの符号を反転できることもみた。この考え方を推し進めて、問(3)を解いてみる。

(3)anが自然数であることを示せ。
この問題で登場する自然数はμ=2とν=5である。これらの和/差そして積の組み合わせで表現されるのがanである。a1もa2も自然数であることは問(1)で確認したので、n>2においてもanが自然数という集合から抜け出していかない(はみ出していかない)ことを示すのがこの問題である。(ちなみに自然数の集合は、割り算に対して「はみ出してしまう」性質がある。例えば2÷3は自然数ではなく、より広い有理数へとはみ出す。)

ここでは二項展開の公式を利用して、物理でよく使う「パリティ」によく似た考え方で問題を分析してみよう。まずは公式をそのまま展開して、p2がμと√νの(有限項の)積和で書けることを確認する。
 nCkもμのベキ乗も自然数である。その積も和も自然数の集合からはみ出すことはない。しかし、√νのベキ乗はkが偶数のときは自然数だが、奇数の場合は無理数となってしまう。無理数と自然数の和、あるいは積は無理数となるから、pnは一般には無理数である。

ただ、この問題で登場する無理数は平方根√νだけであり、その奇数べきはνm√νという形に限られるから、pnは自然数の部分と、自然数×√νという部分との和の形になる。pの逆数q=1/pはμの符号反転させるので、うまい具合に√νに比例する部分が相殺してくれたら、anは自然数になるだろう、という予想が立つ。

実際、逆数のべきを二項展開すると
 となるので、和か差をとればうまく消えてくれそうである。

anを計算してみると

となる。ただし(-1)2n=1を利用した。kが奇数の項は最後の因子が0となるので消えてしまうので、kが偶数の項の和だけをとることになる。またこのとき(√ν)kはうまい具合に平方根が消えて自然数になってくれる。したがって、自然数同士の積の和によってanは表現されていることになるので、anは自然数からはみ出さないことがわかる。

ちなみに、物理学では、σk=1+(-)kというタイプの因子は、量子力学における波動関数のパリティや、対称/反対称性の議論で よく出てくる。実際、大学3年ごろになると、1次元井戸型ポテンシャルの量子化について習うことになるだろうが、kを量子数とみなし、波動関数の分類に役立つことを学ぶことだろう。

量子力学の波動関数の対称性の議論では、力学変数qの符号を変えたときの波動関数ψ(q)の対称性を考える。そのときψ(-q)=ψ(q)なら対称、ψ(-q)=-ψ(q)なら反対称と呼んで区別する。一次元の問題では、両者は直交し、一次独立な解になる。

この問題ではp→1/p (つまりpとqを交換する変換に相当)とする操作に対し、
an = pn+(-q)n→(-)n(pn+(-q)n)=(-)nanという対称性がある。σ=(-)nがパリティ(あるいはシグナチャーと呼んでもよいかも)のような量に相当するという訳だ。nが奇数とき「反対称」、nが偶数のとき「対称」と呼んで良いだろう。

σの値は+1あるいは−1だが、どちらの値の場合でも、anは(自然数という)同じ種類の集合に属するということを示したのがこの問題といえる(どちらかは無理数になり、どちらかは自然数になる、とかいうことはないという意味)。こういう証明は物理ではときどき必要になる。たとえば、SO(3)に属する力学変数ならその行列表現Aは必ずdet (A)=1を満たさなければならない..などなど。

2017年3月2日木曜日

東大2次試験(2017): 問題4(その2)


(2) n 2とする。積a1an , an+1 an1 を用いて表せ。
漸化式を求める問題だ。数列の典型的な問題に見えるが、p=μ+√ν, 1/p = -μ+√νという性質に着目して解いて見たい。複素関数の問題では、複素共役をとると虚部の符号だけ反転するという性質をよく利用するが、それに似たような性質である。p+qとp-qをうまく利用すれば、平方根(νを含む)部分と自然数(μを含む)部分に分離できる。

pn±1 =pn·p±1=pn(±2+√5)である。q=p-1=-2+√5に注意。また、
である。従って,この量の和(n=偶数のとき)/差(n=奇数のとき)は、
となる。ただし新しい数列bn
 と定義した。bnが消去できるのがここでのポイントである。それには「差」を考えればよく、
 を得る。a1=4であることに気をつけると求める解答は a1an = an+1 - an-1となる。

東大2次試験(2017): 問題4(その1)

問(1)はa1とa2を計算するだけの、試験問題としては簡単なものだ。教育的には、無理数の四則演算に関しての習熟度を問う、とかいうのが目的なんだろう。

力学的、あるいは量子力学的に(無理に考えれば)、2回の微分方程式を級数展開法で解く際に必要となる、2つの初期条件、あるいは級数の係数数列の最初の2つの要素の値、に相当するといえるのかも。

もっと簡単に考えれば、例えばある時間tにおける質点の位置x(t)を計算するときは、それより前の時間、例えばt-Δtにおいて測定した少なくとも2つの物理量必要だということだ。つまりx(t) = x(t-Δt)+v(t-Δt)Δt+....となるが、これはテイラー展開の考え方でもある。0<Δt<<1が満たされれば、この式の精度はよくなる。

また、数学的に見れば、フィボナッチ数列のように、an+1をanとan-1から導出するという考え方に準拠したものと言えるかもしれない。フィボナッチ数列は漸化式an+1=an+an-1によって生成されるが、最初にa1とa2を与えておかなければことは始まらない。通常はa1=a2=1とする。

(1) p-qの計算では、前回も書いたように、p=2+√5とおいた時に
が成り立つことに、まずは気づいて欲しいという「親心」だろうと思う。p-qという量は差であり、整数を与える。これをa1とおくというわけだ。答えは、a1=2x2=4。

(2)次はp2+q2 の計算。前回、これも基本量であると考察した。pq=1という重要な関係に注意すると、(p+q)2=p2+q2+2である。これを利用してp2+q2=(2√5)2 - 2 = 18=a2が得られる。試験問題的にはp-qが(1)で計算してあるのだから、(p-q)2=p2+q2-2とするのが普通だろう。
 

2017年3月1日水曜日

東大2次試験(2017): 問題4(その0)

行列の問題が高校数学から削除されてしまい、しばらくやる気が無くなってしまった。
そもそも、研究で使う量子力学なら、面白い切り口で高校数学と向き合えるかな、と思ったのがこのブログを書き始めた主な動機だったから、行列がなくなったのは痛手だった。

最近、力学など大学初年度の物理を担当するようになって、自分の知識に幅が出て来たのと、研究でも数理物理的なテーマに興味を持ち始めたので、行列でなくても何か議論できるかもと思い直した。特に、整数の問題は面白いものが多いので、手始めに今年の東大の2次試験の四番から再開してみようと思う。

理論物理学者が整数や整式の問題に興味を持つのは、やはり量子力学が理由だろう。例えば、1次元の調和振動子を級数展開で解く際には、連続(実数)だと思っていたエネルギーを量子化することにより(つまり整数を使って「デジタル化」する)、級数を多項式(エルミート多項式)に落とし込み、量子化条件と波動関数を手に入れる。多項式の偶奇性(パリティ)とか、次数とか、そういう考え方にとても親近感を感じる。

前置きはこのくらいにしておいて、さっそく問題の分析に入ろう。この問題は整式とか、多項式とか、素数とかが中心にあるのだが、面白いことに無理数p=2+√5が初っ端に登場する。ポイントはpの逆数がpと密接に関連するような特別な無理数を選んでいるところだ。この性質により、様々な面白いことが発生する。

まず2つの自然数μ, νを使って無理数pを,
と表すことにする。この問題ではμとνの間に特別な関係を設定して、逆数1/p=qが
 となるようにしている点が面白い。これが成り立つためのμとνの関係式は
である。試験問題で採用された具体的な値はμ=2, ν=5である。

数式になんらかの対称性(あるいは特別な性質)を要求し、それが成立するための条件式を見出すというのは、量子力学の手法に似ていなくもない。一旦このタイプの「対称性」に気がつけば、おもしろい問題をいろいろとアレンジすることが可能だ。

pとqがこのような関係にあれば, p+qは「純」無理数(ここでは、平方根だけで表現されるという意味)の2√νとなるし、p-qは自然数2μになる。この問題を整数問題にしたければ、p-qと(p+q)2を使うことになる。ただし、後者の量に関しては、pq=1なので、(p+q)2=p2+q2+2となる。したがって、実質的にはp-qとp2+q2が基本量ということになるだろう。(p-q)2=p2+q2-2だから、これは実質的にはp2+q2に等価な量だ。

「これ以外の新しい量を探す」という観点からすると、次は(p-q)3ということになるだろう。これも展開すると
となるので、新たな基本量としてはp3-q3ということになるだろう。このようにして問題で与えられた数列anが規定されたと考えられる。