行列の問題が高校数学から削除されてしまい、しばらくやる気が無くなってしまった。
そもそも、研究で使う量子力学なら、面白い切り口で高校数学と向き合えるかな、と思ったのがこのブログを書き始めた主な動機だったから、行列がなくなったのは痛手だった。
最近、力学など大学初年度の物理を担当するようになって、自分の知識に幅が出て来たのと、研究でも数理物理的なテーマに興味を持ち始めたので、行列でなくても何か議論できるかもと思い直した。特に、整数の問題は面白いものが多いので、手始めに今年の東大の2次試験の四番から再開してみようと思う。
前置きはこのくらいにしておいて、さっそく問題の分析に入ろう。この問題は整式とか、多項式とか、素数とかが中心にあるのだが、面白いことに無理数p=2+√5が初っ端に登場する。ポイントはpの逆数がpと密接に関連するような特別な無理数を選んでいるところだ。この性質により、様々な面白いことが発生する。
まず2つの自然数μ, νを使って無理数pを,
と表すことにする。この問題ではμとνの間に特別な関係を設定して、逆数1/p=qが
となるようにしている点が面白い。これが成り立つためのμとνの関係式は
である。試験問題で採用された具体的な値はμ=2, ν=5である。
数式になんらかの対称性(あるいは特別な性質)を要求し、それが成立するための条件式を見出すというのは、量子力学の手法に似ていなくもない。一旦このタイプの「対称性」に気がつけば、おもしろい問題をいろいろとアレンジすることが可能だ。
pとqがこのような関係にあれば, p+qは「純」無理数(ここでは、平方根だけで表現されるという意味)の2√νとなるし、p-qは自然数2μになる。この問題を整数問題にしたければ、p-qと(p+q)2を使うことになる。ただし、後者の量に関しては、pq=1なので、(p+q)2=p2+q2+2となる。したがって、実質的にはp-qとp2+q2が基本量ということになるだろう。(p-q)2=p2+q2-2だから、これは実質的にはp2+q2に等価な量だ。
「これ以外の新しい量を探す」という観点からすると、次は(p-q)3ということになるだろう。これも展開すると
となるので、新たな基本量としてはp3-q3ということになるだろう。このようにして問題で与えられた数列anが規定されたと考えられる。
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