2019年2月9日土曜日

センター試験の数IA問題5: 後半

後半部分に入ろう。問題文の記号と違う記号を採用してしまったので、その確認から。
我々の接点Tは問題文では接点Dとして、我々の接点Sは接点Eとして記されている。つまり、
\[
T\leftrightarrow D, \quad S\leftrightarrow E
\]
という対応だ。

さて、接点T,Sから頂点C,Bへたすき掛けに線分を張って、その交点をPとする。また、この交点Pと頂点Aを結んで直線APを張り、線分BCとの交点をQとする。これだけ読んでもなんのことかよくわからない。図に描こうとしても様々な線が絡み合って実に複雑だ。こういう時ほど代数幾何法は力を発揮する。

まず今までの状況を整理しておこう。


線分CTと線分SBの交点がPだ。内接円の中心Kの付近に来そうだが、来ないかもしれない。まずはPの座標を計算してみよう。我々は既にC、T、B、Sの座標は全て計算してある。この情報を使って、直線CT, BSの方程式をまず導こう。

\[
 CT: y=\frac{0-2\sqrt{6}}{1-(-1)}(x-1) = -\sqrt{6}\left(x-1\right)\\
 BS: y=\frac{0-\frac{2\sqrt{6}}{5}}{4-(-\frac{1}{5})}(x-4) = -\frac{2\sqrt{6}}{21}(x-4)
\]
この連立方程式の解を求めると、交点Pの座標がわかる。それは
\[
P\left(\frac{13}{19},\frac{6\sqrt{6}}{19}\right)
\]
となる。これは(予想通り)Kとは異なる点であることが確認できた。

この計算結果から、直線AP(=OP)の方程式がわかる。\(\angle BOP = \alpha\)とおくと、
\[
\tan\alpha = \frac{6\sqrt{6}/19}{13/19} = \frac{6\sqrt{6}}{13}
\]であるから、
\[
OP: y=\left(\tan\alpha\right) x = \frac{6\sqrt{6}}{13}x
\]
となる。

ここで、前回の二等分線の性質で導出した幾つかの性質を利用しよう。まず、問題文で、
CQ: BQの比の値を計算させているが、これはOPが角Aの二等分線であったなら 、「瞬殺」で、CQ:BQ = OC:OB=b:cとなる。しかし、OPは二等分線ではない。その情報は角αの中に含まれている。二等分線のときと同じように、三角形の面積を2つの方法で求めておき、その比を考えることで、比の公式の拡張ができるはずだ。

三角形OBQの面積\(S_1\)を2通りの方法で求めよう。まずは、底辺BQ、高さhを使った表現を用いると\(S_1=BQ\cdot h / 2\)となる。hは点Oと線分BCの距離と定義しても良い。次に、αを用いると\(S_1=OQ\cdot OB \cdot \sin\alpha /2\)とも表現できる。これと同じようにして、三角形OCQの面積を表現することもできる。最初の表現の比と二つ目の表現の比は等しいから、
\[
\frac{BQ}{CQ} = \frac{OB\cdot \sin\alpha}{OC\cdot \sin(\theta-\alpha)}
\]
となる。二等分線の場合は、\(\theta = 2\alpha\)だったから、BQ:CQ=OB:OCという公式が得られたわけだ。今回はその状況の拡張とみなせる。\(\sin\theta\)と\(\cos\theta\)の値は問題文に与えられている。また\(\sin\alpha\)の値は\(\tan\alpha\)から計算できるから、加法定理を用いて上の式は計算することができる。ただ、ここではせっかく\(\sin\alpha/\sin(\theta-\alpha)\)の比で与えられているから、それを最大限活用しよう。
\[
\frac{\sin\alpha}{\sin(\theta-\alpha)} = \frac{\sin\alpha}{\sin\theta\cos\alpha-\cos\theta\sin\alpha} = \frac{\tan\alpha}{\sin\theta-\cos\theta\tan\alpha} \\
=\frac{6\sqrt{6}/13}{2\sqrt{6}/5 - (-1/5)(6\sqrt{6}/13)} = \frac{15}{16}
\]
が求まる。したがって、OB=4, OC=7を代入すると、
\[
\frac{BQ}{CQ} = \frac{4}{5}\cdot\frac{15}{16} = \frac{3}{4}
\]
を得ることができる。BC = BQ+CQ = 7だから、BQ=3, CQ=4はすぐにわかる。

実は、この計算法は「代数幾何法」の観点からすると、まだ「邪道」である。代数幾何法を徹底するなら、Qの座標を求めてしまうのがよい!BCの方程式とOPの方程式の連立方程式を解くとQの座標が手に入る。

\[
BC: y=- \frac{2\sqrt{6}}{5}x + \frac{8\sqrt{6}}{5} \\
OP: y= \frac{6\sqrt{6}}{13}x
\]
これを解くと、
\[
Q(\frac{13}{7},\frac{6\sqrt{6}}{7})
\]
を得る。
したがって、
\[
CQ = \sqrt{\left(\frac{13}{7} - (-1)\right)^2 + \left(\frac{6\sqrt{6}}{7}- 2\sqrt{6}\right)^2} =4\\
BQ = \sqrt{\left(\frac{13}{7} - 4\right)^2 + \left(\frac{6\sqrt{6}}{7}\right)^2} =3
\]
となって、比どころか絶対値が先にわかってしまう。

さて、ここまでの結果をpostscriptで描いてみよう。

 まず、直線BSと直線CTの交点Pは、ほんのわずかながら角Aの二等分線には乗っていないことがわかる。したがって、直線OPは、二等分線からわずかにずれる。面白いことに、直線OPは内接円の接点Rに向かって進み、そこでBCと交差する!つまり、R=Qなのである。

上の計算では、\(Q(\frac{13}{7},\frac{6\sqrt{6}}{7})\) という結果だが、最初にやった計算では\(R(\frac{91}{49},\frac{6\sqrt{6}}{7})\)としていた。つまり、Rのx座標の分数は7を使って約分できるのだ....そう言われれば、91 = 7×13であるし、49=7×7である。

内接円にはこんな面白い性質があったのだ!今年のセンター試験は問題の難易はともかく、おもしろい内容が多く、とても勉強になったと思う。

R=Qであれば、Qは接点なのであるから、KQ=KRは内接円の半径に他ならない。こうして、最後から2つ目まで解くことができた。とはいえ、代数幾何学法にこだわるなら、こういうことは何も考えず、KとQの座標をピタゴラスの定理(距離の公式)に適用して計算すればよい。いずれにせよ、正解を得ることができる。

最後の問題は、 直線CTと内接円の交点F(ただしFはTとは異なる)に対する円周角\(\angle SFT\)の余弦を求める問題である。角Aの二等分線と内接円の交点をGとすれば、円周角の定理により、これは\(\angle SGT\)に等しい。三角形SRTは二等辺三角形だから、\(\angle OGT\)の大きさが分かれば良い。これも円周角の定理により、\(\angle OKT\)の半分の角度に等しい。三角形OKTは直角三角形であり、Tは接点なので、KTとOBは垂直の関係にある。\(\angle KOT=\theta/2\)という定義だから、三角形の内角の和の性質を使って、\(\angle OKT = \frac{\pi}{2} - \frac{\theta}{2}\)であることがわかる。したがって、\(\angle OGT = (1/2) \angle OKT = \frac{\pi}{4}-\frac{\theta}{4}\)となる。したがって、\(\angle SGT = 2 \angle OGT = \angle OKT\)であるから、
\[
\cos\angle SFT = \cos\left(\frac{\pi}{2}-\frac{\theta}{2}\right)
= \cos\frac{\pi}{2}\cos\frac{\theta}{2} + \sin\frac{\pi}{2}\sin\frac{\theta}{2}\\
= \sin\frac{\theta}{2} = \frac{\sqrt{15}}{5}
\]
が求まる。最後のところは、すでに求めた\(\tan\frac{\theta}{2}=\frac{\sqrt{6}}{2}\)の値と、\(1+\frac{1}{\tan^2x} = \frac{1}{\sin^2x}\)の関係式を用いた。

円周角の知識を使わず、「代数幾何法」を貫徹するつもりなら、直線CTと内接円の方程式を連立して交点Fの座標を求め、それをつかって線分FT, FS, TSの長さを求めた後に、余弦定理\(TS^2 = FT^2 + FS^2 - 2FT\cdot FS\cos\angle SFT\)を計算すればよい。が、そこまで執着せずとも、お許しいただけるであろう。

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