2018年3月7日水曜日

阪大2018問題3:フーリエ級数展開もどき?(でも複素数で解く)

今年の東大の問題でも多かったのが、曲線や領域のパラメータ表示の問題だ。パラメータをうまく消去して軌跡の関係式を手に入れるために、ごちゃごちゃと解析的な計算を繰り返す、というのがこの問題の中心部分だが、それだけになってしまってはつまらない。

この問題でも、(x,y)が作る軌跡を考えることになるのだが、そのパラメータ表示がフーリエ級数展開もどきに見えるところが、ちょっと面白い。

\[ x=f(t) = 2\sin t + \cos 2t, \quad  y=g(t) = 2\cos t + \sin 2t\]で与えられる曲線Cを考えようという問題である。ただし問題ではtに範囲が付いていて\(0\leqq t \leqq \pi/2\)となっているが、曲線Cの本当の「美しさ」を楽しむためにはtは2πまで回した方がいい。gnuplotで描画してみると、次の図のようになった。

 正三角形を内側に凹ませたような図形である。多分、頂点と頂点の間の角度は120度になっているのであろう。このような「離散回転」がもつ対称性は、結晶の構造などの分析で重要になる。今考えている図形の場合は「三回対称性」を持っている。数学的には、点群の中の巡回群というものに相当する概念によって取り扱うことができる。

この図形で気になるのは、頂点の位置である。そして、対称の軸や点はどこにくるのか、そしてこの図形の面積である。試験中はgnuplotが使えないから、手計算だけで分析を進めていかなくてはならないのが辛いところだ。(出題者はこの形を知った上で問題を出しているから、すごく不公平に感じる....まあ、入試とはそういうものである。)

まずは、図の概形を知らぬふりをして、この問題を解いてみよう。

(1) f(t)とg(t)の最大値を求めよ。ただし、\(0\leqq t \leqq \frac{\pi}{2}\)

この小問は、図形Cが閉曲線になっているので、その存在範囲を調べよ、ということである。この情報は、面積を求める時の積分範囲に相当するから重要である。東大2018(問5)では、\(Q(u)=2z - z^2\)という式が出てきた。これをベクトル風に書くと
\[ \left(\begin{array}{c}x\\y\end{array}\right) = 2 \left(\begin{array}{c}\cos\theta\\ \sin\theta\end{array}\right) + \left(\begin{array}{c}\cos 2\theta\\ \sin 2\theta\end{array}\right)
\] である。一方、阪大のこの問題では右辺第一項に対応するところで、正弦と余弦がひっくり返った形ににはなっているが、ほぼ同じような形式である。正弦と余弦をひっくり返すには位相をπ/2だけずらせば良い。つまり、阪大の場合は
\[ \left(\begin{array}{c}x\\y\end{array}\right) = 2 \left(\begin{array}{c}-\cos(\theta+\frac{\pi}{2})\\ \sin(\theta+\frac{\pi}{2})\end{array}\right) + \left(\begin{array}{c}\cos 2\theta\\ \sin 2\theta\end{array}\right)
\]である。

問題ではθはtと書かれているので、tを時間(time)とみなすことにしよう。力学的に表現すれば、第一項は、周期が2π(振動数が1)の調和振動(単振動)であり、第二項は周期がπ(振動数が2)の調和振動を表す。つまり、周期の異なる2つの調和振動子の線形合成(重ね合わせ)であるから、フーリエ級数の一番簡単な場合に相当する。

角度依存性が第一項と第二項で異なっているのは、見通しが悪いので、統一してしまおう。すなわち、上式を書き直して、
\[ \left(\begin{array}{c}x\\y\end{array}\right) = -2 \left(\begin{array}{c}\cos(\theta+\frac{\pi}{2})\\ -\sin(\theta+\frac{\pi}{2})\end{array}\right) -\left(\begin{array}{c}\cos 2(\theta+\frac{\pi}{2})\\ \sin 2(\theta+\frac{\pi}{2})\end{array}\right)
\]とする。θ+π/2=φと置けば、この形式は東大の問題と(第二項の符号を除いて)よく似た形となる。すなわち、複素数表示で\(C(z)=-2z^*-z^2, z=e^{i\varphi}\)と表せる。

さて、我々は曲線Cの概形を知らないふりをしていても、やはりもう知ってしまっているのであるから、C(z)の絶対値を計算してみたくなるのである。ここから、最大値についての情報は手にはいるであろう。\[ |C(z)|^2 = |(-2z^*-z^2) |^2 = (-2z^*-z^2)(-2z^*-z^2)^* \\ = 4|z|^2+2(z^3*+(z^*)^3)+|z|^4 = 5+2(z^3+z^{*3})\]となる。|z|=1であることを利用した。最後の結果で、3次式(3次の多項式)になっているのがポイントである。ここから、冒頭で観測した「3回対称性」が出てくるのである!

このことをよりよく見るためには、極座標表示を代入して見ると
\[|C(z)|^2 = 5 + 4\cos 3\varphi\]という形を得る。最大値は\(3\varphi= 2k\pi\)のとき\((k=0, \pm 1, \pm 2, \cdots\))で、その値は9、すなわち\(|C(z)|\)の最大値は3である。図を見ると、これは正しいことが確認できる。つまり、\(\varphi=0, \pi/3, 2\pi/3\)の3点で最大値を周期的にとるのである。

面白いことに、\(\varphi=0\)の点は(x,y)座標では(-3, 0)に相当する。これは\(C(z)=-2z^*-z^2\)の負の符号によるものである。また、\(\varphi=2\pi/3\)の点は\((\frac{3}{2},\frac{3\sqrt{3}}{2})\)である。そして\(\varphi=4\pi/3\)の点は\((\frac{3}{2},-\frac{3\sqrt{3}}{2})\)となる。つまり、φの増加(反時計回り)に対して、対応する図形上の点(x,y)は時計回りに動いていく。これは\(2z^*\)の効果である。一方、\(z^2\)は時計回りに動いていくが、振幅(つまり絶対値)が、初項の2に比べて半分しかないため、その効果は半減する。しかし、両者の位相が一致した時に、干渉のように大きな重ね合わせが発生し、図でみるような「棘の張り出し」のような形になるのである。

出発点から、\(2z^*\)の点は時計回りに角速度1でまわり、\(z^2\)の点は反時計回りに角速度2で回る。時間をtで表すと、時間tにおける両者の角度は\(\varphi_0(t)=t, \varphi_1(t)=-2t\)と表せる。両者の角度の差は\(\varphi_0(t)-\varphi_1(t) = 3t\)だが、これが0となるときに上述した「干渉」が起きて、「棘の張り出し」が発生する。角度の差が0と書いたが、一般角に拡張すると、差が2πの整数倍のとき(つまり周回遅れのような状況)も角度は一致する。したがって、\(3t=2n\pi\)のときに「干渉」が発生する。これが、3回対称性の(力学的考察に基づく)起源である。

(1)の答えは、当然「干渉」に相当するときである。計算を逆に辿って、干渉発生時のθを求め、その場合のxの値とyの値を書き出せば良い。ちなみに、「逆干渉」の場合、つまり、振幅の符号が正反対になる場合の条件を調べれば、そこが原点からの距離の最小値、つまり図形の凹んだところ、がもとまるはずである。 干渉とか、逆干渉とかいう概念は波動力学、ひいては量子力学でも出てくるから、理論物理を目指すなら、よく慣れておいたほうがよいだろう。

以上は、図形の形がわかってしまった前提で解く方法だが、図形の概形を知るのは結構面倒である。図形を知らずにこの問題を特にはどうしたらよいだろうか?次の課題としたい。

2018年3月6日火曜日

東大数学2018の全体的な感想

「理論物理学の考え方が楽しめるかどうか」という観点から見ると、今年の東大の数学の問題は面白みがあまりなかった。唯一楽しめたのは、複素数を扱った問題5。座標変換をうまく利用して、一見面倒に見える問題を簡易化して解く、という理論物理における常套手段を存分に使うことができた。

問題5では、x軸上に頂点を持つ「横倒し」になった放物線の方程式\(x=-y^2+\frac{1}{4}\)が、原点からの角度θを用いて\[x=-\frac{1}{2}\frac{\cos\theta}{1-\cos\theta}, \quad y= \frac{1}{2}\frac{\sin\theta}{1-\cos\theta}\]とパラメーター表示できることを学んだ。これはnon-trivialな表現だと思う。ある意味「発見」である。どこかでまた使えるかもしれない。

ちなみに、このパラメータ表現を\(-\pi/2\)だけ回転させたら、\(y=x^2+b\)のパラメータ表示が手に入るだろうか?ちょっと考えてみよう。まず対応する回転行列\(R(-\frac{\pi}{2})\)を計算してみる。\(\sin\frac{\pi}{2}=1, \cos\frac{\pi}{2}=0\)だから、
\[R(-\pi/2)=\left(\begin{array}{cc} 0 & 1 \\ -1 & 0\end{array}\right)\]である。\(x=-y^2+\frac{1}{4}\)上の点(x,y)を回転させて得た点の座標を(x',y')とすると、2つの点は線形変換
\[\left(\begin{array}{c} x' \\ y'\end{array}\right) = R(\pi/2)\left(\begin{array}{c} x \\ y\end{array}\right)\]
によって結ばれている。これを逆に解けば、xとyがx'とy'で記述された表式(具体的にはx=-y', y=x')が手に入り、これをもとの放物線に代入して整理すると、\(y'=x'^2-\frac{1}{4}\)を得る。つまり\(b=-1/4\)だったというわけで、予想通りである。パラメータ表示はしたがって、xとyに対応するものを交換すれば(片方の符号は変えねばならないが)それが、「通常の放物線」のパラメータ表示となるはずだ。すなわち、\(y=x^2-\frac{1}{4}\)のパラメータ表示は\[ x=\frac{1}{2}\frac{\sin\theta}{1-\cos\theta}, \quad y=\frac{1}{2}\frac{\cos\theta}{1-\cos\theta}\]となる。検算して見ると、たしかにこのパラメータ表示は、通常の放物線の方程式に対応していることが確認できる。ここで面白いのは、θが原点の周りの(x軸から測った)角度になっていることである。(放物線の焦点や凖線と呼ばれるものは、この場合はどこにくるか調べて見るのもおもしろいだろう。)この表現は、どこかで役に立つ日がくるだろう。こういうのは、頭の片隅に置いておくと、ある日、大きな発見につながるものである。

ところで、この問題で求めたQ(u)、すなわち円周上の接線P(z)に対し、A(1)と線対称な位置にくる点、の表現が、今年の阪大の問題3とよく似た表現になっている。なぜこんな偶然がおきるかというと、きっとこれは偶然ではなく、両者ともにフーリエ級数を念頭に問題を作っているからではないかと思われる。これに関しては、別の機会に検討してみよう。

東大の問題1では、テイラー展開や極限の考えを適用することができた。2つの極限を、例えば、x=0とx=+∞で考え、その両者の漸近形を中間領域でうまく結ぶ、という考え方は、プランクがその放射公式の導出で利用した、まさに現象論的な考え方である。ボルツマンの「離散化計算の癖」を踏襲した点は見過ごせないが、プランクが量子の概念にたどり着けたのは、この問題で考えたような方法論に従ったからである。問題の難易ではなく、このような観点から問題に向き合うことも、意外に大切なのではないだろうか?

問題2でも、漸近形の考察や現象論的な方法論が重要になった。理論物理では、こういう泥臭いやり方も多様するので、よく練習して習熟しておくとよいと思う。具体例をたくさん計算して、傾向を見抜き、そこから現象論的な法則を導いたり、原理を探ったりする、というこのやり方は、ファインマンが得意としたやり方である。最近、「ファインマン流物理がわかるコツ」という本を最近読み始めたのだが、これは落第寸前のカルテックの学生に向けて行われた補講の講義録である(カルテックのみならず、東大に入っても、かならず一定の割合で落第してしまう学生がいるのは、宇宙の普遍的な真理らしい)。この本の最初で「複雑な関数の微分を簡単に行うやり方」というのを彼は披露しているのだが、その方法は非常に独特で、どうしてそれが正しいか理解するには、実のところ、相当な知識と理解力が要求され、落第寸前の学生には到底わからないだろうと思う。が、彼が「落第寸前の学生を救うために」といいながらも、こういう「新しい計算法」を編み出しては自分が一番楽しんでしまっているのである。「計算を楽しむ」彼の一面(そしてそれは出来の悪い学生には非情である)がよくわかって、思わず笑ってしまったのである。

今年は、軌跡やその類を調べさせる問題がたくさんでた。問題3、4、5、6と、後半の問題はすべて関連している。ただ、問題3で見られたようにパラメータをただ単に消していくだけの問題は(理論物理の観点から見ると)つまらない。せっかくベクトルを持ち出しているのだから、もっと線形代数やベクトル空間の考え方をなぞるような問題にして欲しかった。こういう問題が「ベクトル」だと思われてしまうと、大学で物理学を教える立場からすると、非常に厄介である。高校の指導要領で歪んでしまった「高校生の頭」を、物理を学ぶ「大学生の頭」へと変えるのに、多大な労力が必要となるのである。ある意味、「優秀な」大学1年生ほど、頭がかちこちに固まっていて、そこからなかなか抜け出せず、「落第」していくのである....できるかぎり、高校の段階で、大学で学ぶような「普通の数学的感覚」を教えてあげてほしい。そのためには、東大の数学の問題は、指導要領に基づくのではなくて、出題者自らの研究内容をアレンジして作ってもらいたいのである。

ちなみに、確率の問題が今年は出なかったのは興味深い。量子力学の問題を組み込めたらよいのだが、場合の数の数えあげばかりでは、出題する方も飽きがくるというものである。波動関数がダメなら、ブラウン運動とかどうだろうか?つまり、ランダムウォークである。

2018年3月5日月曜日

ベクトルの問題とは言えないベクトルの問題:東大2018(問3)

東大数学2018の問3は一見してベクトルの問題であるが、あまりベクトルの性質を使って解く問題ではないことがわかり、興味を失った。行列も使う必要がないように見える。

この「つまらなさ」は、パラメータkの逆数が問題に入り込んでいる点にあると思う。割り算という演算は、線形代数やベクトル空間とは親和性があまりないのだ。ベクトル空間や線形空間というのは、やはり「足し算」である(「引き算」も「足し算」に含まれる)。拡張的な内容としては、内積や外積などの「積」の定義をどうするか、というのもある。しかし、この問題ではこのようなテーマの切り口で解釈することはできなかった。残念である。

この問題はkが1/kの形で分母にあるのが邪魔である。そこで、早々と全てをk倍してしまって、「割り算」を消すところから始めることになる。まずは定義から
\[ \vec{OR} =\frac{1}{k}\left(\begin{array}{c} x \\ x^2\end{array}\right) + k\left(\begin{array}{c} t \\ 0\end{array}\right) \equiv \left(\begin{array}{c}X\\Y\end{array}\right) \]である。両辺にkをかけて、xを消去することにする。tというのは\(\vec{OA}\)のx座標であるが、Xにしか現れない。YとXの関係式を得るためには、両方の変数に関わるxを消去した方が便利であるのは明らかである。

この結果として、
\[
Y=k(X-kt)^2
\]
を得る。これは頂点(kt,0)、すなわちX軸に接した放物線である。tの範囲は0から1までだから、この放物線は0からkまで頂点がX軸上を移動することになる。また、Xの範囲はxとXの関係を逆に解いて
\[
kt - \frac{1}{k} \leq X \leq kt + \frac{1}{k}
\]
となる。tを動かしながら、これらの情報をうまく利用して\(S(k)\)を求めれば、この問題はそれほど難しくない。

以上のことから、一次変換も、線形独立性も、考える必要がないので、この問題は単なるパラメータを消す練習としか解釈できなかった。理論物理学の観点からは「残念な問題」であった。

ちなみに、続く問4も素直にやれば解ける問題であり、 高校数学の発想の範囲内でやるだけであろう。やる気が失せたので、こちらも省略。問6は空間の認識のトレーニングであるが、少し捻って2次方程式の問題に持ち込めるかなという希望がちょっとあったのだが、結局は球を引きずり回すだけの話に落ち着いてしまい、理論物理学の考え方を持ち込む余地はあまりなかった。これも省略。

整数問題における極限の利用:東大2018(問2)

東大数学2018の問2を見てみよう。これも簡単な問題ではあるが、方針が定まるまでは色々と試して見なくてはならないだろう。

数列\(a_1, a_2,\cdots\)を\[a_n= \frac{_{2n+1}C_n}{n!} \quad (n=1,2,\cdots)\]で定める。
(1) \(n\geqq 2\)とする。\(\frac{a_n}{a_{n-1}}\)を既約分数\(\frac{q_n}{p_n}\)として表したときの分母\(p_n \geqq 1\)と分子\(q_n\)を求めよ。
(2)\(a_n\)が整数となる\(n\geqq 1\)をすべて求めよ。

(1)は簡単で、すぐに\(q_n/p_n = \frac{2(2n+1)}{n(n+1)}\)であることが計算できる。細かいチェックは必要だと思うので、答案にはそういうのも書き込んでおく必要があろう。が、ここでは省略する。大切なことは、分母を2で割っておく必要があるということである。つまり、分子に出た2を、分母で1/2と書きあらわす必要があるということである。これはnが偶数のときと、奇数の時に分けて考えれば明らかとなる。すなわち、
\[
\frac{q_{2k}}{p_{2k}} = \frac{4k+1}{k(2k+1)}, \quad 
\frac{q_{2k-1}}{p_{2k-1}} = \frac{4k-1}{k(2k-1)}
\]

(2)に移ろう。理論物理でいう「現象論」のアプローチを取ってみる。つまり、いくつか実例を観察してみて、その上で「現象論的な法則」を見つけ出すというやり方である。簡単にいうと、数列をいくつか計算してみるのである。

\(a_1=3, a_2=5, a_3=35/6 = 5.8..., a_4=21/4=5.25, a_5=77/20 = 3.8..., \\ a_6=143/60 = 2.38..., a_7=143/112 = 1.27..., a_8=2431/4032 < 1, \cdots\)
という結果となる。

最初の2つが整数値を取り、あとは分数になるように見える。 グラフにまとめてみると、下のようになった。

横軸はn。紫の線は\(a_n\)、水色が\(q_n/p_n\)、緑が\(4/n\)に対応。
大事な点は、\(a_n\)が一旦分数の値を取り始めた\(n=3\)以上では、数列の値が単調減少しているように見えることだ。これが本当かどうか調べてみよう。n番目とn-1番目の数列の要素の関係は、
\[
a_n=\left(\frac{q_n}{p_n}\right)a_{n-1} = \frac{2n+1}{n(n+1)/2}a_{n-1}
\]
である。nが大きな値をとった時の\(q_n/p_n\)の漸近形は
\[
\frac{q_n}{p_n}=\frac{2+\frac{1}{n}}{\frac{n}{2}\left(1+\frac{1}{n}\right)} \rightarrow \frac{4}{n}
\]
である。上のグラフで4/xのグラフ(緑色)を重ねたのは、これが\(q_n/p_n\)の漸近形となっているからである。実際n=8付近でよく両者は一致しているのが確認できる。

\(n\gg 4\)のとき、\(q_n/p_n\)は1より小さいので、\(a_n < a_{n-1}\)であることが証明できる。つまり、nが大きいところで、この数列は単調減少なのである。問題はどのnからが「十分大きいn」なのかどうか、という判断である。 

この判断をしやすくするために、\(q_n/p_n\)を下のように書き換えてみる。\[\frac{2(2n+1)}{n(n+1)} = 2 \frac{2(n+1)-1}{n(n+1)} = \frac{4}{n} - \frac{2}{n(n+1)} = \frac{2}{n}\left(2-\frac{1}{n+1}\right)\]
最後の等式のところに着目する。\(2-1/(n+1)\)というのは単調増加な双曲線上にあり、大きなnに対し2に収束する。n=4を代入してみると1.8という値を与えるので、\(n\geq 4\)において、ほぼ2に近い値を持ち続けることになる。そこで\(n\geq 4\) において
\[1.8 < 2-\frac{1}{n+1} < 2\]
となるので、この結果を\(q_n/p_n\)に代入すると、
\[\frac{3.6}{n} < q_n/p_n < \frac{4}{n}\]
の範囲で近似できる。いずれにしても、これは単調減少な数列である。

\(q_4/p_4 = 9/10 < 1\)だから、n=4より大きなところで数列は単調減少となることがわかる。つまり、「大きなn」というのは「4以上のn」ということなのであった。

最後のポイントは、数列自体の値が1より小さくなるのはどこか、ということである。数列の値が1より小さくなれば、そこより大きなnにおいて数列は1より小さな分数となるから、整数となることは2度とありえない。上の「現象論的計算」によれば、数列が1を切るのはn=8のときである。したがって、n=8より大きなときは整数となる数列は存在しないのである。

n=7以下の場合で数列が整数になるのは、計算によりn=1,2の2つの場合だけである。したがって、これが答えになる。

テイラー展開で解く:東大2018(問1)

2013年の阪大の問題で使ったテイラー展開を、今年の東大の問題でも使ってみよう。

テイラー展開は大学の物理でよく使う。例えば、\(g\)を重力定数、\(l\)を振り子の糸の長さとすると、振り子運動を記述する運動方程式は
\[
 \frac{d^2\theta}{dt^2} = - \frac{g}{l}\sin\theta
\]となるが、振り子の振角θが微小であるとき(つまり\(|\theta|\ll 1\))、「調和振動子」に近似することができる。調和振動子とは、大雑把にいうと、バネのような復元力による周期運動のことで、力学はもちろん量子力学で重要な役割を果たす。上式の微分方程式で表される調和振動子の解は三角関数となる(後述する)。ちなみに、微小近似が使えないような大きな振幅で運動する場合は、上の微分方程式の解として、三角関数よりも複雑な「楕円関数」というものを導入しなくてはならない。

この「微小振動近似」のときに使う近似が、
\[
\sin\theta \simeq \theta \quad \cdots [A]
\]
というものである。この近似は正弦関数のテイラー展開
\[
\sin\theta = \theta - \frac{\theta^3}{3!} + \frac{\theta^5}{5!} + \cdots \quad [B]
\]
によって正当化できる(このテイラー展開はθ=0周辺の展開となっているので、マクローリン展開と呼ばれるときもある)。余弦関数のテイラー展開は、上式の両辺を微分することで(形式的に)得ることができて、
\[
\cos\theta = 1 - \frac{\theta^2}{2!} + \frac{\theta^4}{4!} + \cdots \quad [C]
\]
となる。

上の式の右辺のような無限和は、べき(冪)級数(すなわち、θの冪関数\(\theta^n\)の無限和)と呼ばれる。冪関数よりも複雑な関数、たとえば三角関数や指数関数など、を冪級数で表す(「展開する」という)とき、この級数のことをテイラー展開(あるいはテイラー級数展開)という。

つまり、近似式[A]は、正弦関数をテイラー展開したとき(最初の等号)、θが小さいという条件の下で、3次以上の高次項は、1次の項に比べて無視できるほと小さいと見なせるという意味である。近似式[A]を用いれば、微小振動の場合の振り子の運動方程式は、テイラー展開に基づく近似によって
\[
\frac{d^2\theta}{dt^2} = -\frac{g}{l}\theta
\]
と近似できる。これが「調和振動子」の運動方程式である。解が三角関数\(\theta(t)=A\cos(\omega t+\delta)\)であることは、代入してみればすぐにわかる。ただし、\(A, \delta\)は定数であり、\(\omega = \sqrt{\frac{g}{l}}\)である。

Taylor展開を行う御利益は、上の例をみても明らかであるが、次の通りである。冪関数ほど解析的に扱いが簡単な関数はないわけで、三角関数や指数関数などの「複雑な」関数の性質を、冪級数で表し、関連する計算や理論を簡易化しようというのである。(\(\sin x\)が\(x\)で近似できたら、問題は劇的に簡易化するのは自明であろう!)こうなると、問題の焦点は展開/級数の収束性に移ってくる。実際、大学に入って解析の講義を受けると、収束判定条件などについて学ぶことになる。

ちなみに、無限に続くこのような和(すなわち級数)で表される関数のことを超越関数(transcendental function)という。つまり、三角関数も指数関数も超越関数である。一方、冪関数の有限和は「多項式」という(高校数学では、なぜか「整式」という)。多項式と超越関数の違いは、有限和と無限和の違いであり、この違いが量子力学で大きな役割を果たす(例えば、1次元調和振動子のエネルギーが量子化され、対応する波動関数がエルミート多項式となるのは、無限和だと思っていたものが、実は有限和でなければならぬという条件、より正確には波動関数が発散せず二乗可積分であるべし、という条件から決まる)。

さて、この問題(問1)で扱うのは次の関数である。
\[
f(x) = \frac{x}{\sin x} + \cos x, \quad (0<x<\pi)
\]

三角関数のテイラー展開、式[B][C]を代入すると、
\[
f(x)= \frac{x}{x-\frac{x^3}{3!} + \cdots} + 1-\frac{x^2}{2!} + \cdots
= \left( 1 - \frac{x^2}{3!} + \cdots\right)^{-1} + 1 - \frac{x^2}{2!} + \cdots
\]

上の式をつかって\(\displaystyle \lim_{x\rightarrow +0}f(x)\)を計算するのは簡単である(答えは2)。これがテイラー展開の強みである。冪級数で表せば、複雑な関数の解析的な性質が簡易化するのである。

上式をさらに「簡易化」するために、\(g(x)=(1+x)^n\)のテイラー展開を考える。nが整数のときは二項展開が利用できるが、より一般の場合に拡張するのはそれほど難しくない。結論だけまとめると、
\[
g(x)=1+nx + \frac{n(n-1)}{2}x^2 + \cdots
\]
となる。

この「二項展開」のテイラー展開を利用して、f(x)のテイラー展開の負べきの部分を近似すると
\[
f(x) =  \left( 1 +\frac{x^2}{3!} - \cdots\right) + \left(1 - \frac{x^2}{2!} + \cdots\right)
\]
となる。\(|x|\ll 1\)であることを使って、2次関数で近似すると
\[
f(x) \simeq 2 + \left(\frac{1}{3!}-\frac{1}{2!}\right) x^2
\]
を得る。これは頂点が(0,2)の、上に凸の放物線である。x→+0の極限が2であることがすぐにわかるし、f(x)の解析的な性質がx=0の周辺でどんな感じになっているか直感的に理解することができる。

今度は\(x=\pi\)周辺のテイラー展開を考える。xの範囲はπまでなので\(x=\pi - \xi\)と置く。ただし\(0<\xi\ll 1\)とする。f(x)は\(\xi\)の関数になるので\(f(x)\rightarrow f(\xi)\)と書き直すことにする。すなわち、
\[
f(x) = \frac{\pi-\xi}{\sin(\pi-\xi)} + \cos(\pi-\xi) = \frac{\pi - \xi}{\sin\xi} - \cos\xi \equiv f(\xi)
\]
である。\(\xi\)についてテイラー展開すると、
\[
f(\xi) = \left(\pi - \xi\right)\left( \xi - \frac{\xi^3}{3!} + \cdots\right)^{-1} + \left(1-\frac{\xi^2}{2!}+\cdots\right)
\]
\(\sin\xi\)を分母で展開した部分に、二項展開のテイラー展開を適用するために、\(\xi\)で括りだし、
\[
f(\xi) = \left(\frac{\pi}{\xi} - 1\right) \left( 1 - \frac{\xi^2}{3!}+\cdots\right)^{-1} + \left(1-\frac{\xi^2}{2!}+\cdots\right) \\ \simeq \left(\frac{\pi}{\xi} - 1\right) \left( 1 + \frac{\xi^2}{3!}-\cdots\right) + \left(1-\frac{\xi^2}{2!}+\cdots\right)
\]
とする。\(\xi\)は微小量であるから、1と比較して無視できる。したがって、\(\xi\rightarrow 0\)の極限において、\(f(\xi)\)は双曲線関数
\[
f(\xi) \simeq \frac{\pi}{\xi}
\]
のように振る舞うことがわかる。つまり\(x\rightarrow \pi - 0\)の極限でf(x)は+∞に発散することがわかる。また、\(f(\xi)\)の二階微分は\(f''(\xi)=2\xi^{-3}\)なので、\(\xi = +0\)で正値を取る。つまり、大雑把に言って「下に凸」のグラフとなる。

\(x=+0\)付近で上に凸の放物線、\(x=\pi-0\)付近で下に凸の双曲線でよく近似されるf(x)であるから、この2つのグラフをxの中間領域でなめらかに繋ぐには変曲点が少なくとも1つ(より正確には奇数個)は存在しているはずである。とすると、極値点というよりも極小点が一つは存在するだろう、という予想が立つ。f'(x)を計算すると\(x=\pi/2\)に極小点があることがわかる。x=0付近のテイラー展開(放物線)と、x=π付近のテイラー展開(双曲線)とをグラフにプロットすると、次の図のようになる。
紫色のグラフがオリジナルのf(x)のグラフ。緑色がx=0でテイラー展開した結果の放物線、水色はx=π付近で展開した結果の双曲線。それぞれの点で展開した結果は、それぞれの点の付近でよくオリジナルの関数と一致している。極小点はπ/2=1.57...あたりに発生しているように見え、その付近で2つのグラフは接続している。
極小点はx=π/2であるが、その付近でテイラー展開はオリジナルの関数f(x)から大きくずれていることがわかる。ここで曲率が変わらないと、2つのグラフがなめらかにつながらないからだが、放物線も双曲線も曲率は一定のままであるから、f(x)からずれていくのである。

極値がx=π/2以外では発生しないことを、きちんと証明するには、\(x>0\)の領域で、\(\sin x - x < 0\)が常に成り立つことを示す必要があるが、これは簡単にできるのでここでは割愛したい。

2018年2月26日月曜日

オイラーの公式で解く東大2018問5(2)

前半(1)に引き続き、「難」と評価された2018年の問5の後半(2)に取り組もう。
(2)Cのうち実部が1/2以下の複素数で表される部分をC’とする。点P(z)がC'上を動くときの点R(w)の軌跡を求めよ。

まず\(w=1/(1-u)\)をzで表しておこう。(1)の結果を使うと、
\[
 w=\frac{1}{1-u} = \frac{1}{1-2z+z^2} = (z-1)^{-2}
\]
を得る。\(w=x+iy\)と表した時、xとyの関係がわかれば軌跡R(w)が手に入る。複素共役\(w^*=x-iy\)を使ってx,yを表すと、
\[
x=\frac{w+w^*}{2}, \quad y = \frac{w-w^*}{2i}
\]
である。この式と上の式を使えば、(x,y)を\(z=\cosθ+i\sinθ\)によって表すことができる。ちょっと長めの計算になるが、注意深く行うと、
\[
x=-\frac{1}{2}\frac{\cos\theta}{1-\cos\theta}, \quad y = \frac{1}{2}\frac{\sin\theta}{1-\cos\theta} \ \cdots [A]
\]という関係が手にはいる。この部分で使うのはオイラーの公式で得られる次の有名な恒等式である。
\[
\cos\theta = \frac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2}, \quad \sin\theta = \frac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i}
\]
また、上の結果を使って得られる、次の計算結果も役にたつ。
\[
(e^{i\theta}-1) (e^{-i\theta}-1) = 2(1-\cos\theta)
\]
xとcosθの関係式を逆に解いて、cosθをxで表すと\(\cos\theta = -\frac{2x}{1-2x}\)となる。この結果を用いて、次にyとsinθの関係を計算することができる。結果は\(y=-\frac{2x-1}{2}\sin\theta\)である。\(\cos^2\theta+\sin^2\theta=1\)の関係式を用いるとθを消去することができて、
\[
\frac{4x^2}{(2x-1)^2} + \frac{4y^2}{(2x-1)^2} = 1
\]となる。これを整理すると
\[
 x=-y^2 + \frac{1}{4}
\]を得る。つまり、軌跡はx軸方向に倒れた放物線である。

さて、問題となるのは、答えとなる軌跡Rはこの放物線全体ではないという点である。PはC’の上を動くだけであるので、θの範囲を\(\frac{\pi}{3}\le \theta \le \frac{5\pi}{3}\)に限らなければならない。

ちなみに、5つ上の式(式[A])を用いてgnuplotでパラメータ表示すると、下の図のようになる(これが答えである)。
式[A]を見ると、xはcosθのみで表されているから偶関数である。θの定義域の対称性と、θの関数としてのxの対称性を考えれば、θ=πのときにx=1/4となって放物線の頂点に対応することがわかる。したがって、θ=π/3, 5π/3の時にx=-1/2となり、ここがxの最小値である。つまり、xの範囲は\(-\frac{1}{2}\le x \le \frac{1}{4}\)である。一方、式[A]をみるとyは奇関数であり、対応するyの値は\(y=\pm\sqrt{3}/2\)である。

オイラーの公式を使うと(代数の計算はちょっと面倒になるが)、この手の問題は簡単に解くことができた。個人的には、この問題は「難」どころか「易」に感じる。というのも、上の解答をみたらわかるように、これは三角関数を含む代数計算の練習問題に過ぎない。

オイラーの公式と回転行列で解く:東大2018問5

2018年の東大2次試験が終わった。河合塾の分析によると「やや難化」だそうである。特に難しかったのが問5の複素数の問題だったという評価である。

ということで、さっそく5番から解いて見たいと思う。

問題5:複素平面上の原点を中心とする半径1の円をCとする。点\(P(z)\)はC上にあり,点A(1)とは異なるとする。点Pにおける円Cの接線に関して, 点Aと対称な点を\(Q(u)\)とする。\(\displaystyle w=\frac{1}{1-u}\)とおき,\(w\)と共役な複素数を\(\bar{w}\)で表す。
 (1) \(u\)と\(\displaystyle \frac{\bar{w}}{w}\)を\(z\)についての整式として表し,絶対値の商\(\displaystyle\frac{\left|w+\bar{w}-1\right|}{\left|w\right|}\)を求めよ。
複素数の問題を解く方針として、「複素数の問題は幾何学で解く」という方針を昨年掲げた。今年もこれでいってみよう。

最初に、この問題で採用されている記号の意味を明らかにしておこう。例えば、P(z)という表現だが、これは「点Pは複素数zによって表される」という意味になるらしい。A(1)は、「点Aすなわちz=1」ということである。ベクトル風に書けば、z=x+iyとしたとき、P(z)=P(x,y), A(1)=A(1,0)ということになる。

次に、\(z\)の複素共役を\(\bar{z}\)ではなく、\(z^*\)で表すことにする。前者は高校数学では採用されているらしいが、物理では世界的に後者を採用している。

(1)をオイラーの公式と代数幾何で解いてみよう。円C上の点Pはベクトル風に書けば\((\cos\theta,\sin\theta)\)となる。この問題では\(0\le\theta<2\pi\)という範囲を考えれば十分である。オイラーの公式を使ってまとめると\(z=\exp(i\theta)=\cos\theta + i\sin\theta\)となる。\(\theta \ne 0\)の時、点Pにおける接線の一般的な方程式をまとめると「やや」複雑な式となる。これを計算するのは不可能ではないが、面倒な計算を扱うはめになる。これを避けるには、座標系を回転させればよい。

まずは円の中心(つまり原点)の周りに、時計回りの方向に点Pを回転させx軸に重ねる。2次元のデカルト座標において回転行列は次のように定義される。
\[R(\theta)=\left(\begin{array}{cc}\cos\theta & -\sin\theta\\ \sin\theta & \cos\theta\end{array}\right).\]ただし、回転の方向は、反時計回りが正の方向(+θ)として定義される。つまり\(R(-\theta)P(z)=P'(z')=P'(1)\)である。

回転後の座標系では、接線はx=1で表される垂直な直線である。一方、点Aは回転によって
\[R(-\theta)A(1)=A'(z^*)\]と変換される。ただし、\(z^* = \exp(-i\theta)=\cos\theta - i\sin\theta\)である。したがって、この垂線に関して「線対称」な点\(Q'(u')\)はベクトル風に考えれば簡単にわかる。ここで、\(u'=x_u'+iy_u'\)と表すことにしよう。点A'から垂線までの距離は\(1-\cos\theta\)である。よって、\(x_u' = 1 + (1-\cos\theta)\)である。一方、y座標のほうは変化がないので\(y_u'=-\sin\theta\)となる。

回転後の座標は自分に都合の良い座標にしてあるので、問題で与えられた座標に戻ることにする。もとに戻るには\(R(\theta)\)を作用させればよい。
\[
Q(u) = R(\theta)Q'(u') =R(\theta)\left(\begin{array}{c}x_u'\\ y_u'\end{array}\right) =\left(\begin{array}{c}2\cos\theta + \sin^2\theta - \cos^2\theta\\ 2\sin\theta-2\sin\theta\cos\theta\end{array}\right)
\]

加法定理(倍角の定理?)を使って整理すると、\(\sin^2\theta - \cos^2\theta = -\cos(2\theta), 2\cos\theta\sin\theta=\sin(2\theta)\)なので、
\[
Q(u): u = 2\left(\begin{array}{c}\cos\theta\\ \sin\theta\end{array}\right) -\left(\begin{array}{c}\cos(2\theta)\\ \sin(2\theta)\end{array}\right) =2z-z^2
\]となる。第二項は\(z^2 = (\exp(i\theta))^2 = (e^{i\theta})^2 = e^{2i\theta} =\cos(2\theta)+i\sin(2\theta)\)により正当化される。

\(w^*/w\)の値は、上の値を代入して複素数の代数を丁寧に計算すればすぐに
\[
\frac{w^*}{w} = \frac{1-u}{1-u^*} = \frac{(z-1)^2}{(z^*-1)^2} = \left(\frac{z-1}{z^{-1}-1}\right)^2 = z^2
\]
となることがわかる。ただし、\(z^* = (e^{i\theta})^* = e^{-i\theta} = 1/z\)という性質を最後に使った。

最後の計算も、これまでの計算の結果を使えば、簡単な代数計算に過ぎない。ただし、\(|z|/|w|=|z/w|\)という性質を覚えておく必要がある(といっても、忘れた時は、オイラーの公式を使ってすぐに確認できる)。
\[
\frac{\left|w+w^*-1\right|}{\left|w\right|} = \left|\frac{w+w^*-1}{w}\right|
=\left|(1-\frac{1}{w}) + \frac{w^*}{w}\right| = \cdots = 2|z| = 2
\]となる。zは円Cの周上にあるからその絶対値は1である。

これで(1)は終わりである。オイラーの公式と代数幾何(ベクトル)を組み合わせることで、簡単な複素数の代数計算にreduceすることができた。