2018年3月5日月曜日

ベクトルの問題とは言えないベクトルの問題:東大2018(問3)

東大数学2018の問3は一見してベクトルの問題であるが、あまりベクトルの性質を使って解く問題ではないことがわかり、興味を失った。行列も使う必要がないように見える。

この「つまらなさ」は、パラメータkの逆数が問題に入り込んでいる点にあると思う。割り算という演算は、線形代数やベクトル空間とは親和性があまりないのだ。ベクトル空間や線形空間というのは、やはり「足し算」である(「引き算」も「足し算」に含まれる)。拡張的な内容としては、内積や外積などの「積」の定義をどうするか、というのもある。しかし、この問題ではこのようなテーマの切り口で解釈することはできなかった。残念である。

この問題はkが1/kの形で分母にあるのが邪魔である。そこで、早々と全てをk倍してしまって、「割り算」を消すところから始めることになる。まずは定義から
\[ \vec{OR} =\frac{1}{k}\left(\begin{array}{c} x \\ x^2\end{array}\right) + k\left(\begin{array}{c} t \\ 0\end{array}\right) \equiv \left(\begin{array}{c}X\\Y\end{array}\right) \]である。両辺にkをかけて、xを消去することにする。tというのは\(\vec{OA}\)のx座標であるが、Xにしか現れない。YとXの関係式を得るためには、両方の変数に関わるxを消去した方が便利であるのは明らかである。

この結果として、
\[
Y=k(X-kt)^2
\]
を得る。これは頂点(kt,0)、すなわちX軸に接した放物線である。tの範囲は0から1までだから、この放物線は0からkまで頂点がX軸上を移動することになる。また、Xの範囲はxとXの関係を逆に解いて
\[
kt - \frac{1}{k} \leq X \leq kt + \frac{1}{k}
\]
となる。tを動かしながら、これらの情報をうまく利用して\(S(k)\)を求めれば、この問題はそれほど難しくない。

以上のことから、一次変換も、線形独立性も、考える必要がないので、この問題は単なるパラメータを消す練習としか解釈できなかった。理論物理学の観点からは「残念な問題」であった。

ちなみに、続く問4も素直にやれば解ける問題であり、 高校数学の発想の範囲内でやるだけであろう。やる気が失せたので、こちらも省略。問6は空間の認識のトレーニングであるが、少し捻って2次方程式の問題に持ち込めるかなという希望がちょっとあったのだが、結局は球を引きずり回すだけの話に落ち着いてしまい、理論物理学の考え方を持ち込む余地はあまりなかった。これも省略。

0 件のコメント:

コメントを投稿