2017年3月10日金曜日

東大2次試験(2017): 問題5 ( 感想 )

x⇄yという交換に対する対称性があると、やはり色々なところが綺麗になる。この考え方を貫けなかったので、k < -3/4における解の分類を直感的に行うことができなかったのは反省点である。たすき掛けの解ひとつひとつは対称性を破る。しかし、2つをペアとして考えると、対称性は「回復」される。一方で、蛾の羽の先端解は、もともとの対称性を受け継いだ解となっている。

物理学では、もともと後者の解、つまりもともとの対称性(たとえば、ハミルトニアンやラグランジアンの持つ対称性)を受け継いだ解だけしか考えなかった。ところが、この対称性を破るような解も存在することに20世紀の中頃以降の物理学者たちは気がついた。その端緒を切ったのが、南部先生の提唱した「自発的対称性の破れ」であり、それを回復させる「南部ゴールドストーンモード」である。

実は、これと同じようなことは相転移の物理でも起きていて、例えば磁性体の相転移では、臨界温度以下で自発的に(回転)対称性が破れ、一方方向に磁化がそろう(つまり、電子スピンの磁気モーメントが揃う)ような状態に変遷する。

この問題では、温度に対応する制御パラメータkを通して、系の持つ対称性を尊重した解(蛾の羽の先端解および、たすき掛けの縮退した解)から、対称性の破れた解 (たすき掛けの解)へと「相転移」するシミュレーションモデルになっている、などと考えることができれば、なかなか楽しめるのではないだろうか?特に、kの値に応じて、共通接線を表現する接点の位置x0を与える3次関数f(x)の形状がどのように変わるか調べるのは、理論物理学者にとってはよく習熟しておくべき、「基礎的な技能」であろう。

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