教科書によくあるタイプの問題では、まず「人間」という「根源事象」uを考え、この根源事象が、たとえば100個集まってできる集合Uを全集合(Universal
set)として定義する。
次に、Uの部分集合(subset)を定義するために、性別という事象Sを考える。\(S=M\oplus
F\)という直和で書ける(社会的に微妙なところはこの問題では無視し、MとFは互いに排反な事象と仮定し、Sはその和事象であるとする)。したがって、Sの全体は、Uの全体と一致する。事象M、Fが作る部分集合もM、F
と表すことにする。その要素の数が例えば、\(n(M)=40,
n(F)=60\)であるとする。この集団の中から人間を一人抽出した際に、Mとなる確率はP(M)=0.4、Fとなる確率はP(F)=0.6となる。排反な和事象なのでP(M)+P(F)=1.0という確率保存則も成り立つ。
Uの中に、もう一つ別の部分集合を考える。たとえば、サッカーをやった経験があるかどうかという事象Fを取り上げよう。経験者はY、未経験者をNとすると、この場合も\(F=Y\oplus
N = U\)となる。YとNは(通常は)排反事象である。n(Y)=50, n(N)=50とする。
つまり、全事象はSという切り口と、Fという切り口によって、異なるタイプの部分集合の直和として表せることになる。
\[
U=S=M\oplus F \\
=F=Y\oplus N
\]
となると、S,Fを組み合わせると、Uは4つの部分集合に分割できる。
\[
U=(M,Y)\oplus (M,N) \oplus (F,Y) \oplus (F,N)
\]
たとえば、男でサッカー経験者は(M,Y)という集合に属し、その要素数をn(M,Y) で表すことにする。例えば、n(M,Y)=35, n(M,N)=5, n(F,Y)=15, n(F,N)=45としよう。
全集合Uから無作為に一人を選んだとき、その人物が(M,Y)である確率は、積事象\(M\cap Y\)の確率のことであり、
\[
P(M\cap Y) = \frac{n(M,Y)}{n(U)} = \frac{35}{100} = 0.35
\]
となることはすぐにわかる。この式を変形すると
\[
P(M\cap Y) = \frac{n(M,Y)}{n(U)} = \frac{n(M,Y)}{n(M)}\frac{n(M)}{n(U)}\\
= P(Y|M)P(M)
\]
となる。実質上、\(n(M,Y)=n(M\cap Y)\)であるから、条件付き確率の定義は、
\[
P(Y|M) = \frac{n(M\cap Y)}{n(M)}
\]
となることがわかる。つまり\(M\subset U\)という部分集合の中における\(M\cap Y\)という別の部分集合の割合として、\(P(Y|M)\)は定義されるということだ。
実際, \(P(M)=0.4=2/5, P(Y|M)=\frac{n(M\cap M)}{n(M)} = 35/40=7/8\)なので、
\[
P(Y|M)P(M) = \frac{7}{8}\cdot\frac{2}{5} = \frac{7}{20}=0.35=P(Y\cap M)
\]
であることが示せる。
これで、条件付き確率\(P(A|B)\)と積事象\(P(A\cap B)\)の確率の違いがわかった。前者は、条件Bで括られる部分集合Bを分母にもつ事象\(A\cap B\)の確率であり、後者は、事象\(A\cap B\)の全集合Uに対する確率である。
この基本事項の理解の基に、センター試験の(1)に戻ってみよう。
(つづく)
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