センター試験の時期となった。今年も面白い問題がいろいろと出てくることを期待したい。
まずは、センター試験で時々出題される「相加相乗平均」の関係式
\[
\frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab}
\]
について復習しておこう。例えば、平成27年に出題されている。
等号が成立する条件、すなわち相加平均の最小値、も合わせて記憶しておかねばならないが、それは\(a=b\)の時である。どうして\(a=b\)のときに等号が成り立つかというと、それは証明をみれば明らかとなる。
[よくある証明]
\(a,b>0\)に対し、
\[
\left(\sqrt{a}- \sqrt{b}\right)^2 \geqq 0
\]
は常に成立する。当然、等号が成り立つのは\(a=b\)の時に限られる。左辺を展開すると\(a+b-2\sqrt{ab}\)となるが、最後の項を右辺に移項して両辺を2で割れば、相加相乗平均の式となる。■
正の数が3つに増えた場合、すなわち
\[
\frac{a+b+c}{3} \geqq \left(abc\right)^{1/3}
\]
も成り立ち、等号はこの場合も\(a=b=c\)のとき成り立つ。
さらに、\(n\)この場合にも成立し、等号はこのときも\(a_1=a_2=\cdots = a_n\)のとき成り立つ。
\[
\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n a_i \geqq \left(\prod_{i=1}^n a_i\right)^{1/n}
\]
\(n=3\)の場合の証明、さらには帰納法を使った一般の場合の証明の例は、こちらの論文で確認できる。
さて、平成27年の問題において、相加相乗平均の公式を忘れてしまったとしても、普通に微分すれば答えは出ることを確認しておこう。
\(x=2^{-3}a^{-2}, y=2^2a^2\)の場合、\(a>0\)を動かした時に、\(x+y=f(a)\)の最小値を見つける問題だ。相加相乗平均の公式を適用するときは、\(xy=2^{-1}\)を計算しておけばよい。積を計算すると、\(a\)に依存する部分が相殺するのがこの問題の「うまい」ところだ。これにより計算は簡単となって、\(x+y\)の最小値は\(2/\sqrt{2}=\sqrt{2}\)とあっという間に求まる。最小値となるのは\(x=y\)のときなので、
\[
2^{-3}a^{-2} = 2^2a^2
\]
を\(a\)について解けば、\(a=2^{-5/4}\)を得る。
この問題を解くだけなら、こういう「幸運」にすがってもよいのだろうが、実際の研究においてこんなうまいことばかりが起きるとは限らない。
\[
f(a) = x + y = 2^{-3}a^{-2} + 2^2a^2
\]
を\(a\)の関数だと思って、\(a>0\)の領域で\(f(a)\)の最小値を計算してみる。まず微分すると、
\[
\frac{df(a)}{da} = -2^{-1}a^{-3}+ 2^3a
\]
となる。したがって、\(df(a)/da=0\)の解を求めると\(a=\pm 2^{-5/4}\)を得る。増減表を丁寧に作れば、\(a=2^{5/4}\)のときに極小値を得る。最小値かどうかは\(a\rightarrow 0\)の時の\(f(a)\)の振る舞いで決まるが、
\[
\lim_{a\rightarrow 0} f(a) = +\infty
\]
なので、極小値は最小値であることがわかる。したがって、\(x+y\)の最小値\(f(2^{5/4})=\sqrt{2}\)を得る。
上で見たように、掛けると指数部分が相殺して0となるようにしておけば、微分積分をするよりも、相加相乗平均の公式の方が簡単に求まる。とすると、次のようなタイプの関数の最小値は相加相乗平均で求まるということだろう。
\[
f(x)= c_0 x^{n} + c_1x^{-n}
\]
ただし、相加相乗平均の公式を使うときは、初項と第二項が正値のときに限られることには注意しないといけないので、例えば\(x>0, c_0, c_1>0\)のとき、最小値は
\[
x_0=\left(\frac{c_1}{c_0}\right)^{\frac{1}{2n}}
\]
のときで、\(f(x_0) = 2\sqrt{c_0c_1}\)となるが、この結果は微分しても、相加相乗平均でやっても同じ結果だ。
指数関数の場合もいけるだろう。
\[
g(x) = d_0 \exp(x) + d_1\exp(-x),
\]
ただし\(d_0, d_1 > 0\)とする。
こういうタイプの関数は(1次元の)量子力学の計算で出てきそうな感じがする。実例はいまのところ思い浮かばないが、出くわしたら追記に書いておこう。
面白いのは、正負のべきが対称的に含まれる多項式の最小値は、一般の相加相乗の公式で簡単に求まるはずだ。例えば、
\[
f(x) = 2x^3 + 3x^2 + x + 3 + 2x^{-1} + x^{-2} + 2x^{-3}
\]
という関数の最小値は、相乗平均により\(2\cdot 3 \cdot 1\cdot 3 \cdot 2 \cdot 1 \cdot 2=2^3\cdot 3^2\)の7乗根に7を掛けたものとして求まるのだろうか?
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