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2019年1月19日土曜日

センター試験の数学II:相加相乗平均

センター試験の時期となった。今年も面白い問題がいろいろと出てくることを期待したい。

まずは、センター試験で時々出題される「相加相乗平均」の関係式
a+b2ab
について復習しておこう。例えば、平成27年に出題されている。

等号が成立する条件、すなわち相加平均の最小値、も合わせて記憶しておかねばならないが、それはa=bの時である。どうしてa=bのときに等号が成り立つかというと、それは証明をみれば明らかとなる。

[よくある証明]

a,b>0に対し、
(ab)20 は常に成立する。当然、等号が成り立つのはa=bの時に限られる。左辺を展開するとa+b2abとなるが、最後の項を右辺に移項して両辺を2で割れば、相加相乗平均の式となる。■

正の数が3つに増えた場合、すなわち
a+b+c3(abc)1/3
も成り立ち、等号はこの場合もa=b=cのとき成り立つ。

さらに、nこの場合にも成立し、等号はこのときもa1=a2==anのとき成り立つ。
1nni=1ai(ni=1ai)1/n

n=3の場合の証明、さらには帰納法を使った一般の場合の証明の例は、こちらの論文で確認できる。

さて、平成27年の問題において、相加相乗平均の公式を忘れてしまったとしても、普通に微分すれば答えは出ることを確認しておこう。

x=23a2,y=22a2の場合、a>0を動かした時に、x+y=f(a)の最小値を見つける問題だ。相加相乗平均の公式を適用するときは、xy=21を計算しておけばよい。積を計算すると、aに依存する部分が相殺するのがこの問題の「うまい」ところだ。これにより計算は簡単となって、x+yの最小値は2/2=2とあっという間に求まる。最小値となるのはx=yのときなので、
23a2=22a2
aについて解けば、a=25/4を得る。

この問題を解くだけなら、こういう「幸運」にすがってもよいのだろうが、実際の研究においてこんなうまいことばかりが起きるとは限らない。
f(a)=x+y=23a2+22a2
aの関数だと思って、a>0の領域でf(a)の最小値を計算してみる。まず微分すると、
df(a)da=21a3+23a
となる。したがって、df(a)/da=0の解を求めるとa=±25/4を得る。増減表を丁寧に作れば、a=25/4のときに極小値を得る。最小値かどうかはa0の時のf(a)の振る舞いで決まるが、
lima0f(a)=+
なので、極小値は最小値であることがわかる。したがって、x+yの最小値f(25/4)=2を得る。

上で見たように、掛けると指数部分が相殺して0となるようにしておけば、微分積分をするよりも、相加相乗平均の公式の方が簡単に求まる。とすると、次のようなタイプの関数の最小値は相加相乗平均で求まるということだろう。

f(x)=c0xn+c1xn

ただし、相加相乗平均の公式を使うときは、初項と第二項が正値のときに限られることには注意しないといけないので、例えばx>0,c0,c1>0のとき、最小値は
x0=(c1c0)12n
のときで、f(x0)=2c0c1となるが、この結果は微分しても、相加相乗平均でやっても同じ結果だ。

指数関数の場合もいけるだろう。

g(x)=d0exp(x)+d1exp(x),
 ただしd0,d1>0とする。

こういうタイプの関数は(1次元の)量子力学の計算で出てきそうな感じがする。実例はいまのところ思い浮かばないが、出くわしたら追記に書いておこう。

面白いのは、正負のべきが対称的に含まれる多項式の最小値は、一般の相加相乗の公式で簡単に求まるはずだ。例えば、
f(x)=2x3+3x2+x+3+2x1+x2+2x3
という関数の最小値は、相乗平均により2313212=2332の7乗根に7を掛けたものとして求まるのだろうか?


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