2019年1月20日日曜日

センター試験の数学II:指数と対数(2)

数IIの大問1の半分は指数/対数の問題で、これらは他の分野と結合することが多い。平成26年の問題は整数の問題と結合している。

m,nは自然数。つまり、1,2,3,...という、1以上の正の整数とする。(0が入らないのがポイントで、それは対数の真数条件を満たすため。)与えられた式は
\[
\log_2m^3 + \log_3 n^2 \leqq 3
\]
という不等式で、これを満たす整数(m,n)を全部探してね、という問題だ。

最初の2つは具体例であり、こういう計算はこの問題に限らず、いつでもやってみる価値はある。具体的な計算を通して、見通しを明らかにするのである。現代数学でも、最初にコンピューターで数値計算してみて、公式や定理の傾向を掴んで定式化する方法論も取り入れられつつあると聞く。

(m,n)=(2,1)のときは、左辺が3になるので条件を満たす(等号の場合)。
(m,n)=(4,3)=(\(2^2,3\))のときは、 左辺=6+2=8なので条件を満たさない。

上の計算をやってみると、整数m,nのべきの数が不等式を成立を左右しているように見える。そこで、べきの部分を対数の中から引っ張り出してみたくなる。

\[
3\log_2 m + 2\log_3 n  \leqq 3
\]

真数条件より\(m,n > 0\)だし、そもそも\(m,n\)は自然数だから\(\log_2 m\)も\(\log_3 n\)も正数となる。したがって, \(x,y\geqq 0\)に対し、\[3x+2y \leqq 3\]のような関係式を考えるのと同じだ。

ただし、xは整数mによって決められるので、小さい順に並べると、m=1のときx=0, m=2のときx=1, m=3のとき\(x=\log_2 3\), m=4のとき, x=2,...といった感じである。しかし、3x+2y=3のx切片は1なので、m=1,2の場合のみを考えればよいことがわかる。

xと同様に、yの値も離散的になっている。小さい順にy=0(n=1), \(y=\log_3 2\)(n=2), y=1 (n=3),...となる。yが取りうる最大値は3x+2y = 3のグラフのy切片である3/2だが、y=3/2のときに対応するnはどのくらいの値になるだろうか?\(y=\log_3 n = 3/2\)をnについて整理すると\(n=3^{3/2}=3\sqrt{3}=3\cdot 1.73...\sim 5.19...< 6\)となる。つまり、nに関しては、n=1,2,3,4,5を考えることになる。

したがって、m=1,2の2通り、n=1-5の5通り、合計10通りについて不等式成立の有無を調べればよいことになる。

この問題の最初でやった具体的計算はy=0(つまりn=1)の場合に相当する。このとき不等式を満たすx軸の領域は\(0\leqq x \leqq 1\)である。\(x=\log_2 m\)だから、この領域は
\[
0 \leqq \log_2 m \leqq 1 \Longleftrightarrow \log_2 1 \leqq \log_2 m \leqq \log_2 2
\]
と表せるが、対数関数は一様増加な関数だから
\[
1 \leqq m \leqq 2
\]
と同じこととなり、mは自然数だからm=1,2となる。つまり、y=0(n=1)のときは、(m,n)=(1,1),(2,1)が不等式を満たす組み合わせである。

次にn=2の場合について考えてみたいのだが、このとき\(x=\log_3 2\)となるが、この値を記憶している人はそうはいないだろう。もしかすると\(\log_{10} 2=0.301, \log_{10} 3 = 0.4771\)を覚えている稀有な人が若干はいて、底の変換を用いて
\[
\log_3 2 = \frac{\log_10 3}{\log_10 2} = \frac{0.4771}{0.3010} \sim 1.58...
\]
と計算できる人がいるかもしれない。が、これは面倒だ。しかも、nを走らせて、対応するmを探すのは場合分けが増えてしまって手間がかかる。したがって、nの代わりにmを走らせて、つまりm=1とm=2の場合についてnを動かしながら考察する方が効率的に思える。

m=1の時、つまりx=0のとき、条件式は\(y\leqq \frac{3}{2}\)となる。 これを満たすyは上ですでに考察している。つまりm=1,2,3,4,5の5通りである。

次にm=2の時、つまりx=1のとき、条件式は\(y\leqq 0\)となるから、y=0、つまりn=1の場合に限られる。

したがって、不等式を満たすm,nの組みは(m,n)=(1,1),(1,2),(1,3),(1,4),(1,5), (2,1) の6通りとなる。

対数関数は実数関数ので取りうる値は実数全体となる。しかし、対数の引数(真数)が整数に限られる時、対数が取りうる値は離散的になり、制限が加わる。こういうタイプの計算は量子力学で見かけるので、楽しんで解いておくとよいだろう。

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