では、これまでの準備(その1、その2)を基に、東大2017問題3を再び解いてみよう。
東大の問題では点αの垂直二等分線上を動く点z=x+iyの逆数が描く軌跡を求めることになっていたが、今回はより一般の場合に拡張することにしょう。すなわち、直線ax+by+c=0の上を動く点をz=x+iyと表すとき、1/zが描く描く軌跡が円となることを示そう。
例によって、オイラーの公式(eiθ=cosθ+i sinθ)と極座標(x=r cosθ, y=r sinθ)を用いると、直線上の点はまずz=reiθと書くことができる。この逆数は1/z = (1/r)e-iθとなる。
直線の方程式も極座標で書いてしまおう。
ax+by+c=0 → r(acosθ+bsinθ)+c=0
上の方程式から、rをθ、a, b, cで表すことができる。これを1/zに代入すると
1/z = - e-iθ(acosθ+bsinθ)/c
となる。
次に、
cosθ=(eiθ+e-iθ)/2, sinθ=(eiθ-e-iθ)/(2i)
という恒等式を使って、1/z中の三角関数の表現を消去する。すると、
1/z = (-a+ib)/c - e-2iθ(a+ib)/(2c)
という表現を得る。(a+ib)/2c は複素数だから、
(a+ib)/2c = r0 eiθ0
と表すことができる。ただし、tanθ0 = b/a、および r02 = (a2+b2)/(4c2)である。
したがって、以上をまとめると
1/z = (-a+ib)/c - r0 e-i(2θ-θ0)となる。
すなわち、1/zは円の軌跡であり、中心の位置は(-a+ib)/c、半径はr0である。ちなみに、zの回転方向とは逆向きに回転し、そのスピードは2倍となる。また、回転の出発地点(位相)は-θ0だけずれる。
この結果を東大の問題に適用してみよう。以前の計算結果を利用すると、
a=α0, b=α1, c=-(α02+α12)/2
である。これを代入すると、簡単に以前得た解答が再現される。
この問題の解き方は、以前のゴリゴリ計算した方法よりもずっと楽だ。やはり、複素数は素晴らしい!
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