以前「複素数の問題を幾何の問題にしてしま」った、東大2017問題3だが、再び解いてみることにした。今回試すのはベクトルの考え方である。
複素数z=x+iyは、そもそも二次元の情報(x,y)をもっている。ガウス平面を、xy座標系とみなすことができるから、前回のように「複素数の問題を幾何の問題として捉える」ことが可能となる。前回は、幾何学の考え方を推し進めたが、今回は代数幾何的な考え方、つまりベクトルと対比しながら解いてみたいと思う。
単位円の表現
まずは、ベクトルによる単位円の表現を考える。まずは原点を中心とする円の周上に点Pをおく。この点の位置を示す位置ベクトルrは
r=R(θ)ex
と表すことができる。ex はx方向の単位ベクトルを表し、R(θ)は2次元の回転行列である。円周上の点Pはθによって指定されるからr=r(θ)と書いた方がよいだろう。
次に、円の中心位置を示すベクトルをr0とし、この円を平行移動する。
r(θ)=R(θ)ex + r0
これがベクトルによる円の表現である。
次に、複素数によって上の方程式と等価な式を導出する。r(θ)→Z(θ), r0→αとするところまでは簡単である。問題は、単位円のの中心と円周上の点を結ぶ単位ベクトルの表現であるが、これは複素数の方が簡単な表記ですむ。R(θ)ex →eiθとなる。まとめると
Z(θ) = eiθ + α
となる。
オイラーの公式によると、
eiθ = cosθ + i sinθ
と表すことができる。物理学者が複素数を使うのは、このオイラーの公式と、複素積分(ローラン級数展開と線積分)くらいといってもよいかもしれない。量子力学の位相がこの形で書かれるせいもあってか、物理学者はとにかくオイラーの公式が大好きである。
直線の表現
こんどは、平面中の直線の表現をベクトル風に書いてみる。2点A,Bを通るのが直線である。この2点のベクトルをaとbと書くことにする。直線に平行な単位ベクトルeは
e=(b-a)/|b-a|と書ける。直線はaを通るのだから、平行移動して
r(t) = a + te
と書くことができる。
複素数で書くと、r(t)→Z(t), a→αという対応の下に
Z(t) = α + t eiθ
と表せる。このとき、θは定数で、直線の傾きを表すことに注意。tが変数である。
ここでまとめたような、円と直線のベクトル表現は、大学初年度でやる力学で出てきそうな表現だ。それを、あえて複素数でやろうというわけである。行列を習っていない最近の学生なら、回転行列を学ぶよりも、オイラーの公式を使う複素数の方がとっつきやすいかもしれない。
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