2017年4月11日火曜日

複素数の問題を幾何の問題にしてしまう(その2):東大2017問題3

前問につづいて問(2)を問いてみよう。
問題文はクリックして拡大可能
オイラーの公式を用いてz=reとおくと(rは非負の実数,θは偏角)、z3=1が解くべき方程式だから、r3e3iθ=e2nπiとなり(ただしnは整数)、r=1, e=e2nπi/3を得る。したがって、z=e2nπi/3が解である。nは任意の自然数だが、3つに大別できる。n=0 (mod 3)のときz=1, n=1(mod 3)のときz=β=(-1+i√3)/2, n=2 (mod 3)のときz=β2=(-1-i√3)/2となる。

ちなみに、3つの解、1, β, β2は正三角形をなす。上の表式から明らかなように、βとβ2はy軸に沿って、つまりx軸と垂直に位置する。したがって、問(1)の観点からすると、Lはβとβ2を結ぶ、垂直線x=-1/2に対応する(ただしz=x+iyとxy座標系を対応させた)。
したがって、a=2, b=0, c=1とおくことができる。

解の軌跡は、bからb2に到るまでの円周を反時計回りにたどった曲線。

また、問(1)のαに相当するのがx=-1である。以上を踏まえ、問(1)の結論を拝借すれば、問(2)で扱うのは、半径1の円であり、その中心は(-1, 0)である。ただ、問題となるのは、問(1)と異なり、Lの長さが限られている点である。a,b,cの値を代入すると、yをパラメータとしてw=u+ivは次のように表せる。

u = (-2)/(4y2+1),      v=(-4y)/(4y2+1) ..... (1)

また-√3/2 <= y <= √3/2である。yの境界値を代入して計算すると、u(y=±√3/2) = -1/2、およびv(y=√3/2) = -√3/2となる。したがって、点(-1/2, √3/2)から反時計回りに円周上を移動して、点(-1/2, -√3/2)に到るまでが求める軌跡である。円と垂直線が交わる交点から左側の円周に相当する、と言い換えてもいいだろう。

問(1)では計算に若干苦労するだろうが、それは問(2)で報われる。一般的な状況を考えると、導出するのは一見大変になるのだが、一旦結果を手に入れると適用範囲が広いので、苦労は必ず報われる。「将来を見据えた先行投資」にちょっとだけ似ているかも。

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