問題文の詳細は、クリックして拡大。 |
ただ、tan(x)のそもそもの定義は「直角三角形の(斜辺以外の)2辺の比」であるから、tan(x)=1/pとか1/qというのは、底辺がp(もしくはq)で、高さが1の直角三角形を考えよう、ということになる。この比をもつ直角三角形の角度をα、βとしよう、というわけである。
この状況をもとに、その底辺の長さが1/2, 高さが1の直角三角形を考えたとき、その見込む角度がα+2βとなることはあり得ますか?というのがこの問題の解釈であり、それは幾何の問題といってもいいだろう。整数の問題は、三角関数の問題から結構作れるのかもしれない。
ちなみに、 この問題の答えを基に、底辺の長さがp=2,q=3,1/2、高さが1の三角形に相当する直線をそれぞれ描いてみると、下の図のような感じになる。x軸から緑線までの角度がα、x軸から紫線までの角度がβ、x軸から水色までの角度がα+2β, したがって、紫色から水色の線までの角度がαとなる。
それでは早速、どうやったらtan(α+2β)=2のとき、tan(α)=1/2, tan(β)=1/3という値が得られるのか、計算してみよう。
まずは正接の加法公式は
tan(x+y) = {tan(x)+ tan(y)} / {1+tan(x)tan(y)}
となるか確認しておこう。これは、tan(x)=sin(x)/cos(y)という正接の定義、それから通常の加法定理、たとえばcos(x+y)=cos(x)cos(y)-sin(x)sin(y)など、を使えば、上の公式は簡単に導出できる。tan(2x)= 2tan(x)/(1+tan(x)*tan(x))というのは、x=yとすることで簡単に導き出せる。
さて、x=α, y=2βとして、tan(α)=1/p, tan(β)=1/qを、加法定理の結果に代入し、少しだけ整理すると、
を得る。これが2となる場合の(p,q)を探せばよい。ちなみに、p=2, q=3を代入すると、ちゃんと2になることは確認できる。どのようにtan(α+2β)=2という条件式を使って答えにたどり着くか、決まり切ったやり方はない。しかし、答えが自然数である、という強い制限を利用するのは常套手段といえるだろう。
自然数は「割り算」に対して閉じていない。にもかかわらず、上の条件式は商の形となっている。このあたりがうまく使えそうだ。
商を考える際、2つの方針がある。pでまとめるか、qでまとめるかである。
ちなみにqでまとめると2次式になる。2次式の一般解は無理数となるから、qが自然数となるためには判別式が自乗の形式をとることがまず要求される。また、2次方程式の解の公式は、商の形になっている。したがて、うまい具合に分子/分母が割り切れる形になって、分母が消えてくれたらqは自然数になる。こうして、qについてまとめると2つも条件が出てくるから、pについての制限がすぐに見つかって、問題が解けそうな気配がある。しかし、この方面で挑むと途中で壁に当たってしまう。こういうときは、すぐに別のやり方に切り替えるべきだ。
ということで、pについてまとめると、1次式が手にはいる。
左辺はpについて1次式というだけでなく、偶数でもある。にもかかわらず、右辺には1が現れている。2pは自然数にならなくてはならないのが、その前に5q/(q2-q-1)が1よりも大きくないと、2pが2, 4, 6,...といった偶数の自然数になれない。したがって、最初の条件として
が得られる。これがうまい具合にqの取り得る範囲を狭めてくれると嬉しい。
まずは q2-q-1 > 0の場合を考える。両辺にこの量をかけても不等号の向きはかわらない。ちょっとだけ式を整理して整式の不等式として表すと、
となる。これを解くと
となる。q2-q-1 > 0を解くとq≥2を得るので、上の条件と合わせると
q= 2, 3, 4, 5, 6
だけが答えの候補となる。この候補を 5q/(q2-q-1)に代入して、奇数になるものが解である。すべての候補を試してみると、q=3の場合だけ条件は満たされる。このとき、2p=1+3, すなわちp=2が得られる。すなわち(p,q)=(2,3)だけが解となる。
次に q2-q-1 < 0の場合を考える。この場合は不等式を解くとq>6かつq≤1となるが、この条件を満たすqは存在しない。
以上より、(p,q)=(2,3)だけが求める答えとなる。
2pについてまとめた式が手に入った時、問題はほぼ解けたと思ってよいだろう。狙い通りに、その条件式がqの範囲を絞ってくれた。ただ、いつもこのようにうまくいくとは限らない。qについてまとめる方法は今回はうまくいかなかったが、別の問題では救いの一手になるかもしれない。いつでも、いろいろな方法について考察するのは大切だろう。
しかし、なにより大切なのは、自然数と有理数の違いや、無理数の意味など、数の定義に関する基本的な理解だろう。この基礎知識こそが様々な手法を編み出すアイデアの源泉となる。
こういう考え方は、物理では量子力学でときどき必要になる。連続的に思える物理量(たとえばエネルギー)が、量子化される条件というのは、まさに整数と実数の違いをよく理解することから出発するのだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿