2017年4月13日木曜日

複素数の問題を幾何の問題にしてしまう(おまけ):京大2017問題1

前回の東大2017問3によく似た問題が、京都大学でも出題されていた。が、こちらの方は随分簡単に解ける。とはいえ、数学の基礎に関して、大切な事柄が詰まっていて、とても良い問題だと思う。(東大の問題は、結果は面白かったのだが、途中に至る計算が煩雑で、あまり面白くなかった。京大のこの問題は、複雑な計算はないし、結果に至るまでの計算もなかなか面白い。)
問題文はクリックして拡大可能
設問で(x,y)を使うように誘導されているが、これは前回我々が採用した考え方と同じだ。複素数の問題を、幾何の問題に焼き直して考えよう、というアプローチだ。(この問題を作ったのは、きっと工学系か物理系の先生じゃないだろうか?)

この問題でもオイラーの公式をつかって、複素数を極座標表示で扱うのがよいだろう。すなわち、w=re=r(cosθ+i sinθ)とおく。(1)ではr=R, (2)ではθ=αと定数におき、残りの自由度(最初の問題ではθ,二番目の問題ではr)を動かしたときの軌跡を求めさせている。どちらの場合も、答えが円錐曲線となるところが面白い。パラメータを消去する時、足し算を使う(1)は楕円に、引き算を使う(2)は双曲線になる。

(1) R>1であることは後で効いてくるかもしれないから、忘れないようにしておこう。w+1/w = Re+R-1e-iθなので、

x=(R+R-1)cosθ,  y=(R-R-1)sinθ

となる。θの定義域は0≤ θ< 2πとなる。cos2θ+sin2θ=1を使って、θを消去するだけで, xとyの関係式が手にはいる。それはx,yに関しての2次式であるから、軌跡は楕円である。
 R>1なのでRの逆数をとっても問題ない(R=0が抜けている)。また、R> R-1も常に成り立つ(R-R-1≠0が保障される)。したがって、短半径、長半径ともに、常にwell-definedである。

x,yが唯一つのパラメータ(θだけ)で表せるのが非常に重要である。これがために、前回の東大の問題と違って、非常に解きやすいのだ。

(2)今度は偏角を固定して、動径を変数にするとどんな軌跡になるか、という問題である。
ここでもαの値の範囲が0からπ/2までであることを記憶しておこう。これはsin(α), cos(α)ともに正値をとる、という意味である。

w +1/w = re+r-1e-iα=(r+r-1)cos(α) + i(r-r-1)sin(α)なので、

x=  (r+r-1)cos(α),  y=(r-r-1)sin(α)

である。ただし、0<rという定義域をrは持つ。この表式からrを消去して、x,yの関係式を求めれば良い。

指定されたαの範囲においては、cosαもsinαも0にならないから、次のように変形する。

x/cos(α) = (r+r-1),  y/sin(α) = (r-r-1)

そして両辺を自乗すると、素晴らしいことに2次の項と定数項だけが残る。r/r=1だからである。
続いて、辺辺を「引き算」してrを消去するため、(x,y)は双曲線の軌跡となる。
ただし、 r>0なので、x>0という制限がかかる(xのパラメータ表示を参照せよ)。一方、yに関しては制限がない。これは、直感的に言えば、双曲線のうち「右側」のものだけ、という意味に他ならない。双曲線の2つの漸近線y=±tan(α)xのうち、傾きが負のもの(-tan(α))よりも上側にある双曲線、と表してもいいだろう。(予備校ではこの部分を 2r = x/cos(α) + y/sin(α) > 0という形で表しているようだ。)

個人的には、漸近線の傾きがtan(α)となるあたりが、さすがに京大の数学だ、と関心した。

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