座標が定められた空間において、直線lは2点(1,1,0), (2,1,1)を通り、直線mは2点(1,1,1),(1,3,2)を通る。点(2,0,1)を通り、l,mの両方と交わる直線をnとする。三次元空間における直線の問題。1977年だと単なる受験問題だっただろうが、現代だと、この手の問題は、三次元系ビデオゲームのプログラミングで必要になったりするだろうから、案外身近に感じられる問題かもしれない。例えば、塔の上で砲台を回転させながらビーム打ちまくるような感じか?nを敵機の航行軌道(直線軌道だが...)と見なせば、nとlとの交点はビームを最初に被弾した場所、nとmの交点はビームの第二波をくらって爆発したところ、などと考えることができる。ゲームのプログラマーを目指すなら、解けないとまずい問題。
lとnの交点、およびmとnの交点を求めよ。
まずは、「空間」の意味から始めよう。ここでいう「空間」とは「実空間」のことで、物体が飛び回るいわゆる三次元空間のことだ。この空間中のある場所を表すには変数(x,y,z)を用いる。当たり前と思うことかもしれないが、ここでひとつ確認しておくことがある、すなわち、「三次元空間とは、その空間で一点の位置を指定しようとする時、3つの数が必要」という意味であること、つまり(x,y,z)だ。2次元空間なら、(x,y)の2つ。1次元空間なら(x)の一つ。4次元なら(x,y,z,t)の4つ。などなど、と続く。一般にn次元空間の場所を表すためには、n個の変数の組を用いる。
このような複数の変数の組み合わせを一まとまりとして考え、一つの要素と見なす。たとえば、v=(x,y,z)といった具合に。vは考えている三次元空間に含まれる要素(「場所」という意味を持つ要素)で、(x,y,z)の値を変えれば、異なる場所、つまり異なる要素になる。全ての「場所」、すなわちv(x,y,z)という要素の集合が、三次元空間に他ならない。(この段階ではまだvをベクトルとは呼ばないでおこう。)
この三次元空間に「足し算」と「かけ算」を導入する。とはいえ、それは小学校で習うものとはちょっと違う。要素vに対する足し算とかけ算だ。まず「足し算」を次のように定義する。
v+u=w
この時、v,u,wはすべて三次元空間に含まれる「どこかの場所」、つまり要素の一つだ。v,u,wは記号に過ぎず、実際には3つの変数で表されるから、具体的には、
(Vx, Vy, Vz) + (Ux, Uy, Uz) = (Wx, Wy, Wz)
となる。この「足し算」では、括弧のなかで同じ位置にある変数同士の足し算をすると定義する。すなわち
Vx + Ux = Wx, Vy + Uy = Wy, Vz + Uz = Wz
とする。これを三次元空間中の要素(場所)vに対する「足し算」と定義する。
次に、v,u,wのような「場所」(つまり3つの変数の組み合わせ)ではなく、通常の数をλ、μなどと書く事にする。この三次元空間でu,v,wなどに対して定義される「かけ算」とは、次のようなものとする。
λ v = u
これを各成分ごとに書き下すと
λ(Vx, Vy, Vz) = (Ux, Uy, Uz)
となる。この「かけ算」は括弧の中で同じ位置にある変数同士を、通常のかけ算によって関係づけるものと定義する。すなわち、
Ux = λVx, Uy = λVy, Uz = λVz
とする。 これを三次元空間中の要素(場所)vに対する「スカラー積」と呼ぶ事にする。
上で決めたような「足し算」と「スカラー積」が定義された空間を「ベクトル空間」と呼ぶ。ここまで来たら、v,u,wのことを「ベクトル」と呼んでいいだろう。ベクトル間の和とスカラー積の組み合わせを『線形結合』という。例えば、
λu+μv = w
が成り立つとき、「ベクトルwは、ベクトルuとベクトルvの線形結合だ」と言い表す。
このようなベクトルの合成(これは、上式を左辺から右辺に向かって読み取った場合に相当)、あるいはベクトルの分解(これは上式を右辺から左辺に向かって読み取った場合)は、高校物理の力の合成/分解で登場する。すなわち、ベクトルuとvからなる平行四辺形を描いて、その対角線をベクトルの和(w)と考える、あのやり方だ。
与えられたベクトル空間においてベクトルの分解を考える時、いったい幾つのベクトルに分解するのがもっとも自然で、効率がよいのか知りたいだろう。その答えは、実は、与えられた空間の次元に含まれている。つまり、三次元空間なら3つ、二次元空間なら2つ、そしてn次元空間ならn個、というのが答えだ。
これを理解するには、ベクトルの「一次独立」という概念を知らないといけないが、これが意外に難しい概念で、大学に入ったばかりの学生の多くが最初につまずく箇所だ。詳細に解説すると面倒なので、この段階では一次独立については通り過ぎることにしよう。ただ、n次元空間では「独立な」ベクトルの数はn個だ、ということだけは覚えておく事にしよう。
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