2014年8月24日日曜日

センター試験の数I(その7)

二次方程式の解は、意外なほどに綺麗にまとまるのだが、そこに到るまでの計算過程はちょっと面倒だ。すべてを書くとごちゃごちゃするので、ここでは結果を利用した図のみを示しておこう。ついでに、直線ACを延長して、ADとの交点Eも描き込んでおいた。
弧CDについての円周角CAE(=xとする)は、同じ弧を共有する円周角CBDと等しい。直線BDは角ABCの2等分線だから、角CBD=角ABD=xが成り立つ。つまり、角ABC=2x。△ABCはAB=CDの2等辺三角形なので、角ABC=角ACB。つまり、(1/2)角ACB=角CAEが成り立つ。

外角ACB=内角(CAE + AEC)という関係に、上の結果を代入すると、△AECは、AC=CE=4の2等辺三角形であることがわかる。

最後は余弦定理により、AE2=AC2+CE2-2AC・CE cos(π-θ)、ただしθ=角ACB=ABCなのでcosθ=1/4となる(問題で与えられている)。よってAE = √(32 + 32/4) =√(40)=2√(10).

まとめると、

△ACEと△ADCは相似形の2等辺三角形。AC:AE=4:2√(10)=1:√(10)/2。よって、AD:CE=x:4=1:√(10)/2から、x=4√(10)/5となる。また、長さの比の2乗が面積の比となるので、S(△ADC):S(△ACE)=1:10/4=1:5/2。また、S(△ACE)=4×4×sin(角ACE)/2 。sin(角ACE)=sin(π-θ)=sinθ=√(15)/4だから、S(△ACE)=2√(15). 従って、S(△ADC)= 2√(15) / (5/2) = 4√(15)/5


大学入試では、古代ギリシア時代に発展した「ユークリッド幾何学」を駆使し、ところどころに三角関数を用いた解析を使えば、問題は解ける。しかし、対応する作図をpostscriptで描くには二次方程式を解いたり、円と直線の方程式を連立させる等、代数の手法を使って問題を解決する。中世のデカルトによる代数幾何学の発展により、幾何学は代数で解決できることがわかったことは、大きな進歩だったといえる。postscriptは、この恩恵をおおいに享受している!

2014年8月19日火曜日

センター試験の数I(その6)

第3問を続ける。次は問題文に従って角ABCの二等分線を導入する。角ABCの2等分線が外接円と交わる点(Bではない方)をDとする。

2等分線の求め方は次のようにした。

(1)局所座標系O'を、点Bを原点にして設定する。O'のx軸と直線BAの成す角度をθ, x軸と直線BCがなす角度をφとする。角ABCは従ってθ+φと表される。この角度の2等分線を直線BDとすると、二等分された角度は(θ+φ)/2だから、BDとx軸のなす角αはθ—(θ+φ)/2の絶対値、すなわちα=|θ―φ|/2となる。θ>φを仮定すると、α=(θ―φ)/2。

(2)直線BDの傾きはtan(α)だが、加法定理と半角の公式を利用すると、cosθ,sinθ,cosφ,sinφを使って書き表すことができる。cosθやcosφは点A,B,Cの座標を用いて表せる。例えば、
と書ける。cosφも同様に表せる。

(3)よって
によってtan(α)は点A,B,Cの座標によって表すことができる。これを利用して描いたのが上図。

作図する上で、次に問題となるのが点Dの座標だ。直線BDと外接円の交点ということを利用すれば、直線BDの方程式を求めて、外接円の方程式と連立させ、その2次方程式の解を求めることになる。

2014年8月17日日曜日

センター試験の数I(その5)

まずは図に、与えられた条件を書き込む。
AB=4, BC=2, cosθ=1/4が与えられた情報(θは角ABC)。

この情報を使って、まずはACを計算する。これは素直に余弦定理を適用すればよい。すなわち、AC2=42+22-2・4・2・cosθ = 16+4-4 = 16.つまりAC=4となって、三角形ABCは二等辺三角形ということがわかる。つまり角ABC=角ACB

また、sin2θ=1-(1/4)2=15/16、よってsinθ= √15/4はすぐに求まるが、これは外接円の半径を正弦定理で求めるための準備。正弦定理よりR=(1/2)(4/sinθ)= 8√15 / 15を得る。または、正弦定理を忘れてしまった人は、角AOC=2×角ABC=2θであることを利用し、三角形AOCに余弦定理を適用すればよい。すなわち、42=2R2-2R2cos(2θ)=2R2(1-1+2sin2θ)=4R2(15/16)より答を得る。

センター試験の数I(その4)

第三問は図形の問題。パズルのようにして解いていくので、楽しいと思う人もいるかもしれないが、現代物理とはあまり関係がない。正弦定理..研究では.使ったことないし、その存在すら長らく忘れてしまっていた...余弦定理はごくたまに使うかもしれないが。まあ、正弦定理は余弦定理の応用定理だから、試験が終わって忘れていても、余弦定理さえしっかり理解しておけば簡単に導出できるから心配することはない。

物理への応用はあまり期待できないので、ここはpostscriptの勉強でもしながら問題を解いていくことにしよう。

今年の図形の問題は、三角形に外接する円が登場する。この三角形の一辺の長さは4、もう一つは2、およびこの2つの辺に挟まれた角の余弦(cos)が1/4と与えられている。電卓を叩いてarccos(1/4)を計算させると、凡そ75.5°となる。このすぐ後の小問でわかるように、この三角形は底辺が75.5°の二等辺三角形となる。精密な図形を描くのは大変だが、できる限り正確に描いてみよう。

まずは、外接円の「中心O」を描くことにする。そのために、絶対座標と相対座標を使い分けることにする。前者は「紙」の四隅の一つを原点とする座標。postscriptの場合は、左下隅が原点となり、右方向にx軸、上方向にy軸がセットされる。絶対座標を使うと、紙から図形がはみ出ることが多くなるので、原点を紙の中心部分に移動した「相対座標」を導入する。いままでの経験からして、だいたいx,yそれぞれの座標を250ずつ平行移動した感じでちょうど良くなる(平行移動に関しては第2問でちょっと扱ったが、ここでいまやっているような感じで、実際には応用するというわけだ。)そこで、相対座標の原点を、絶対座標における座標によってまずは定義しておく。対応する命令は
/x0 250 def /y0 250 def
と、こんな感じになる。

次に、この相対座標の原点を表す「点O」を描く。これは半径5の塗りつぶされた小円によって表す。対応する命令は
/r0 3 def 
x0 y0 r0 0 360 arc fill 
となる。 2行目が黒丸の円を描く命令。4と5番目の数字(0と360)では円周を一周分描くよう指定している。原点の周りに「外接円」を描いてしまおう。その半径はr0の30倍とする。
x0 y0 (r0 30 mul) 0 360 arc 
stroke 
ここまでの結果をまとめた図が次の図。

次に、この円を外接円とする三角形の頂点A,B,Cを円周上に置く。Aの位置は任意に選べるので、相対座標で(30 r0, 0)の場所におくことにする。これはx0 30 r0 mul add y0 movetoとして描画点の移動をしてから、x0 30 r0 mul add y0 r0 0 360 arc fill strokeとする。 点BとCは二等辺三角形の底辺にあるべき頂点2つなので、相対座標のx軸に対して線対称になるように配置されるから、B(R cosθ, R sinθ), C(R cos(-θ), R sin(-θ))に打てばよい。θは150°としよう。
/th 150 def 
/R r0 30 mul def 
x0 R  th cos mul add y0 R th sin mul add r0 0 360 arc fill
ここまでの結果をまとめた図は次の通り。
後は、頂点を直線で結べばよい。これらの操作をまとめると、次のようなpostscriptとなる。
newpath
/x0 250 def /y0 250 def /r0 3  def
/th 150 def /ph 35  def /R r0 30 mul def
x0 y0 r0 0 360 arc fill x0 y0 R 0 360 arc
stroke
/xi 0 ph add def
/x1 x0 R xi cos mul add def /y1 y0 R xi sin mul add def
x1 y1 moveto x1 y1 r0 0 360 arc fill
/xi th ph add def
/x2 x0 R xi cos mul add def  /y2 y0 R xi sin mul add def
x2 y2 r0 0 360 arc fill
/xi -1 th mul ph add def
/x3 x0 R xi cos mul add def /y3 y0 R xi sin mul add def
x3 y3 r0 0 360 arc fill
stroke
x1 y1 moveto x2 y2 lineto
x3 y3 lineto x1 y1 lineto
stroke
[2 1] 10 setdash
x0 y0 moveto x1 y1 lineto
x0 y0 moveto x2 y2 lineto
x0 y0 moveto x3 y3 lineto
stroke

三角形全体をちょっとだけ回転して不自然な対称配置を修正し、さらに頂点から原点までを点線で結んだ。対応する図は次のような感じとなる。
図が完成したので、問題を解くとしよう。

2014年8月16日土曜日

センター試験の数学I(その3)

2014年の数Iの第2問に入ろう。これは2次曲線の問題。2次曲線(あるいは2次関数、放物線,....)は物理では頻出するので、ここは習熟のために我慢して勉強しておこう。

この問題も、変数xと定数(パラメータ)aの2つが出てくる。どちらも実数であることは自明のこととなっている。まずは頂点の位置を平方完成などによって計算する(微分して、極小値の所、とやってもよいだろう)。答えは(-a, 2a2-6a-36). 頂点のy座標がaの2次関数となっているのが、あとで効いてくることは、この段階でも容易の想像できる。pとおけ、とすぐ後の文で指定されるので、案の定である。結局、pとはaの2次関数のことで
ということ。この問題は、xとaに関しての2つの二次関数を、混乱せずに並列して取り扱えるかどうかを問う問題といえる。

(1) p=-27と指定されてしまうと、2次方程式を得る。ここではa2-2a-3=0となるので、因数分解(a-3)(a+1)=0により、a=3,-1を得る。2次の係数は定数だから、放物線の曲率、つまり「形」はaの値と無関係で一定。一方、放物線の頂点はa=3のとき(-3,-36), a=-1のとき(1,-28)とaに依存する。以上より、x軸方向に4,y軸方向に8だけ平行移動すれば、a=3のグラフはa=-1のグラフに重なる。

(2)この問題の最後の部分だけがちょっとだけ面白い。が、最初の小問は基本問題のオンパレード。ここで間違えると大学には入れないだろう。

「x軸との共有点」とはつまり、2次関数y(x)が解をもつかどうか、ということと等価。重解も含めてよいので、判別式D=D(a)が0以上の正の数であればよい。D(a)=-2(a+3)(a-6)となるので、(a+3)(a-6)<= 0が求める条件となる。すなわち-3 <= a <= 6が答え。

次は、解が存在する範囲内において、p(a)の最大値、最小値を探れ、という問だが、最小値は下に凸の放物線なのだから、まずは頂点の位置が範囲内にあるかどうか探る必要がある。p(a)を微分するとa=1が極小値の位置となる。これは(2)で求めた範囲にあるため、ここで最小値を与えることがわかる。つまりp(-1)=-39が最小値。放物線の最大値は、左右の境界上のどちらかとなるので、a=-3とa=6の値を比較すればよい。が、放物線の対称軸(a=1)がa=-3の方に寄っていることから、a=6が最大値を与えることがすぐにわかる。つまりa(6)=36が最大値。

最後の小問は、条件が増えて考察すべき領域の重なりが単純ではなくなる分、「考える」楽しみがちょとだけある。その増えた条件というのが、「共有点のx座標がどちらも−1より大きくなること」というもの。共有点を持つという条件は上ですでに考察した(-3 <= a <=6である)。まずは、放物線の頂点のx座標が−1より大きくなければならないという必要条件を課すべき。それは-a > -1と表せるので、a<1を得る。さらに、この条件と共に、二次曲線のx=-1における値が正の値をとるという条件を課せば、必要十分となる。後者の条件は3a2-8a-35>0で、これを解くとa<-7/3, 15/2 < aを得る。まとめれば、-6<=a<-7/3という答えを得る。

また、直接的な条件から攻めるなら、2次方程式の解-a±√Dが-1より大きいことを使えばよい。2つの解の内、小さな方が-1より大きくなる条件を付ければ、大きな解が-1より大きくなるのは当然なので、-a-√D > -1という条件が必要十分条件ということになる。移項して整理するとこの関係式は1-a > √Dと書ける。両辺が正であれば、2乗しても関係は変わらないから(1-a)2>D(a)とできる。1-a>0であることは上で考察済みなので、2乗の操作は正当化できる。これを解けば、a<-7/3とまとめることができる。共有点が2つという条件と連立すると、-3<= a < -7/3を得る。


センター試験の数学I(その2)


今年の前期は非常に忙しく、諸々の会議、新しい講義、カリキュラムの準備等に忙殺されてしまった...久方ぶりとなるが、夏休みにようやく入ったので、センター試験の数学の分析を続けよう(来年にならないうちに...)。

第一問の前半は無理数を用いた多項式の計算だった。多項式は量子力学でよく出てくるし(例えばエルミート多項式は、一次元調和振動子の波動関数に使われる)、電磁気の多重極展開や角運動量理論の球面テンソルなど、物理ではあちらこちらで使われる。また、行列式やパフィアンなど、線形代数に関連する物理理論(つまり量子力学とその応用理論)でも頻出するので、多項式のトレーニングが足りないと意外と苦労する。

さて、第一問の後半は、がらっと趣が変わって、連立不等式の問題だ。かなり初等的な問題なので、現代物理の観点からするとスキップしたいところだが、実はこの年のセンター試験はこの後の問題もこれに似たり寄ったりのレベルなので(あくまで私見だが)、この問題をスキップしたら、残りもスキップしてしまうことになる。ここは我慢して解いてみることにする。

扱う連立不等式は次の通り、

aは定数。(x,a共に実数かどうかは明記してないが、そうじゃないと、そもそも「不等式」の概念が成り立たないから、ここは記述がなくとも「実数なのは自明のこと」として許すことにしよう。しかし、意地悪くとれば、aは整数、xは無理数に限る、などといった制限をかけてもよいのだから、高校の数学を越えて一般の数学に入るときは要注意だ。さらに、一般の問題では「xは実変数」とも書いておくべきだろう。)

この問題ではxが変数で、aが定数のはずだが、続く問ではxが指定されて、aの範囲を求める問題がまず出てくる。aは定数なのに、変数のように考える必要が出て来て、戸惑う人もいるかもしれないが、物理ではよく出てくる考え方だ。つまり、xは変数で、aが「パラメータ」に相当する。たとえば、場の理論の基礎、φ4理論で自発的対称性の破れを考えるとき、パラメータ「質量μ」は重要な役割を果たす。(当然だが、この場合の変数は「場の変数φ(x,y,z,t)」にあたる。)質量パラメータの値に応じて、φが織りなす物理が根元から変わってしまうような物理現象がある、というのがこの理論の中心部分だ。これは「現象の相転移」に似たような枠組みといえるのかもしれない。パラメータの範囲によって、変数の取り得る「物理」が大きく変わる、という考え方に似たものが、実は第2問の最後に登場するので、その時に再度喚起を促したいと思う。

さて、能書きはこのくらいにして、問題に入ろう。

(1)x=1と変数が指定されてしまい、あたかもパラメータのように扱われる。不満はあるだろうが、ここはひとつ我慢して問題を解くことにしよう。連立不等式にこの値を代入し、aについての不等式を解けば、簡単に答えは出る(a<=1/3)。

(2)今度はx=2と指定されて、求める領域の「補集合」的領域を求める問題。計算すると、「満たす領域」はa<=1/2となるので、その「補集合」a>1/2が答え。

(3)やっとaがパラメータとなる。これも簡単に解けて、-1 <= x < 6を得る。

(4)不等式2の解というのが、-4-a < x < 6-a、不等式1の解は x >= 6a-1。前者が上限と下限が定まった「有限区間」(しかし数学では「開区間」という!)、後者は下限だけが与えられた開いた区間(でも数学では「無限閉区間」というらしい)。とすると、連立解が、不等式2のみの解と一致するには不等式1の下限が、不等式2の区間を「切り取らない」ような場所にくればよい。つまり、6a-1が-4-a「以下」であればよい。(ちなみに、前問のa=0のケースでは、「切り取る」状況になっているので、この問題の解とはならない。最後に、自分の答えを確認して、(3)の結果、つまりa=0が範囲外になっているかぐらいは確認しておきたいものだ。)「以下」か「未満」か、というのがちょっと迷う所だが、「連立解」であることを考えれば、「以下」でよいことは確認できる。すなわち、a <= -3/7が答え。(忘れずに「確認」しておくと、この領域はa=0を含んでいないから、辻褄はあっている。)

この問題は特にコメントすることはこれ以上はない。強いて言えば、(4)が物理でよくみられる「パラメータの値によって物理が変わる」タイプの問題といえなくもない。が、それ以外の問題は正直あまり面白くないので、ここでは取り上げたくなかった... 最近「絶対値の定義に慣れておらず、その外し方のところで間違える初学者が多い」と聞くので、この問題はきっと「絶対値の使い方をちゃんと勉強してね」というのがメッセージなんだろう。