センター試験の問題が公表されたので、小手調べに幾つか解いてみよう。毎年、最後まで解ききらないうちに、二次試験が始まってしまって、いつも中途半端となり反省している。今年はそうならないように頑張ってみようと思う。中途半端となる最大の原因は数式の入力だ。今まではLaTeXiTを使ってpngファイルを作成し、それを画像ファイルとして貼り付けていた。今回からは、MathJaXというJavaScriptの拡張機能を使って、直接LaTeXコマンドをhtmlで使う方法を導入してみようと思う。果たして、これでどのくらい時間の節約になるか、興味津々である。
まずは、毎年出題される論理問題から始めて見たい(第1問の[2])。なかなか良い問題が出るので、注目しているセクションでもある。
まず考える全体集合(英語ではUniversal setというらしいが、数学者によっては"Universe"、つまり「宇宙」という用語を用いることもある。しかし、これを真似して物理の論文でuniverseを使ったら、「なんで、量子力学の論文の中に「宇宙」が出てくるんだ?!」とひどく怒られたことがある)の定義として、\[ U=\{x|x \le 20, x \in N\}\] が与えられる。Nは自然数全体を表す。Uに含まれる3つの部分集合A,B,Cの包含関係(inclusion, containment)を議論しようという問題である。
Aは20の約数である。素因数分解すると\( 20 = 2^2 \cdot 5\)であるが、因数としては1が含まれることも注意しておこう(1は素数ではないので、「素因数」分解には含まれないが、「因数」分解には含まれる)。したがって、上の素因数分解を利用し、可能な因数を数え上げると、\[A=\{ 1, 2, 2^2, 5, 2\cdot 5, 2^2\cdot 5\}=\{1,2,4,5,10,20\} \]となり、Aに含まれる元(element、集合に含まれる「要素」のこと)の数(群論では位数=orderというが、集合論では基数あるいは濃度、cardinalityというらしい)は6となる。
Bは20より小さい、3の倍数である。すなわち\[B=\{3,6,9,12,15,18\}\]となり、元の数(基数)は6である。
Cは20以下の偶数だから \[C=\{2,4,6,8,10,12,14,16,18,20\}\]となり、基数=10である。CはUの半分を占める。Cの補集合\( U-C\)を\( C^c\)と表すと、\(U=C+C^c\)と分解できる。当然、\(C^c\)は20以下の奇数の集合となる。また、\(C\cap C^c=\emptyset\)であり、\(C\cup C^c = U\)である。(ちなみに、日本の高校数学では補集合は\(\bar{C}\)と表すが、世界に出るとこの記号の意味はわかってもらえないことが多いので注意が必要だ。cという記号はcomplementary set、つまり補集合の「補」を表す英語の頭文字である。)
Aには奇数が含まれているので、\(A\subset C\)というのは当然ながら「偽」である。 また、Aの中には3の倍数は一つも含まれていないので、AとCの共通元の集合は空集合であることも明らかである。したがって、\(A\cap C=\emptyset\)というのは「真」である。
A,B,CおよびUの包含関係を図にすることは簡単にできる。
この集合の包含関係で重要なのは、すべての集合が奇数/偶数によって直和分解できることだ。例えば、\(A\cap C = \{2,4,10,20\}, A\cap C^c =\{1,5\}\)だから、\(A=(A\cap C) + (A\cap C^c) = A\cap(C+C^c) = A\cap U = A(∴ A\subset U)\)である。全体集合Uが、偶数の部分集合Cと奇数の部分集合\(C^c\)に直和分解できることを認識するのが重要である。
さて\((A\cup C)\cap B\)である。直接やっても解けるのだが、\(A\cup C\)が面倒臭い。これは偶数全体に、Aの奇数部分\(A\cap C^c\)を「足した」ものであるから、{1,5}+{2,4,6,....,20}である。これとBの共通部分というのが最終的な答えであるが、Bは3の倍数である。{1,5}に3の倍数は存在しないので、\( C\cap B\)が答えであり、それは偶数の3の倍数であるから{6,12,18}の3つである。したがって、命題(c)は「真」である。
実は、以上の考え方は、論理式の展開の流れをなぞったものになっている。展開すると、
\[ (A\cup C)\cap B = (A\cap B)\cup (C\cap B) = \emptyset \cup (C\cap B) = C\cap B\]となる。
最後の問題は、2つの包含関係式の比較である。左辺は\( (A^c\cap C) \cup B\)、右辺は\( A^c\cap (B \cup C)\)であり、これらが等価かどうか判断せよ、という問題である。論理式を展開してもあまり見通しは良くない感じである。Cと\(C^c\)が任意の集合を2分割するという性質を使えば、\( ... \cap C\)という関係式がある部分をできるだけ生かしたい。
左辺にはこの関係があるので、さっそく適用して見る。\( (A^c \cap C)\)だから、Aに含まれていない偶数の集合であり、それは{6,12,18}+{8,14,16}である。最初の集合はBに含まれている偶数、後者はBに含まれていない偶数である。Bとのunionを最後に考えれば、Bの奇数部分{3,9,15}を足した{6,12,18}+{8,14,16}+{3,9,5}=B+{8,14,16}、つまり3の倍数(20以下)と{8,14,16}が該当する集合となる。
右辺を次に考えてみる。こちらは展開してみると\( A^c \cap (B \cup C) = (A^c \cap B) \cup (A^c \cap C)\)である。AとBは重なりを持たないので、\(A^c \cap B = B\)である。したがって、Bと{6,12,18}+{8,14,16}のunionはB+{8,14,16}となって、左辺と同じ集合になる。
つまり[ク]の答えは(0)正、正である。 この問題を正しく解く秘訣は、やはり包含関係の図を描くということに尽きると思う。加えて,\(U=C+C^c\)という関係にも注意がいけば、早く解くことができる。
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