この整数問題は非常によい問題で、頭を動かして、手を動かして、その場で「考える」必要があるだろう。決まり切ったパターンで乗り切ろうとしてもなかなかうまくいかず、諦めてしまう人は多いと思うが、本来合格させたいと思う学生はこういう問題を解いてくる学生である。チャレンジした学生には「ボーナス点」を与えてもよいのではないだろうか?問題は3つのセクションに分かれていて、それぞれが独立の要素もありつつ、お互いに関連している。最初の部分でこけるとその後は全滅してしまうので、そこがこの問題の「問題点」かもしれない。
(1)素因数分解させた後に、因数分解(約数)の組み合わせの数を調べさせる問題。整数の問題と数え上げの問題が混じった、このタイプの問題を好きな人(出題者=大学の先生)は多いと思う。
今年のセンター試験では114が選ばれた。素因数分解は、\[114 = 2^4\cdot 3^2\]である。114の約数をすべて数え上げると幾つになるか?注意すべきは、1と114も約数に含まれるということ。
約数は\(2^m\cdot 3^n\)と表せる。ただし、\(m=0,1,2,3,4; n=0,1,2\)である。結局、約数の総数は、(m,n)の組み合わせ総数の数と同じである。 したがって、\(5\times 3=15\)が答えである。
(2) さきほど素因数分解した114が再び出てくる。今度は素数7との関わりを考えつつ、144と7が同時に関係する公倍数とか公約数について、一次式と絡めて解く良い問題である。与えられたのは\[144x-7y=1\]である。一見して一次関数のように見えるが、(x,y)は整数の組であることに注意を払う必要がある。つまり、このグラフは原子の一次元結晶のように点と点が離れて並んでいる「物体」であって、連続体としての「棒」が伸びているイメージを持ってはならない。
x,yについては負の整数となる可能性も考慮すべきだが、簡単な分析から不要であることがすぐにわかる。ただ、試験中にこの分析をしていると時間が取られてしまうし、その努力が評価もされないので、解答欄の大きさを見て(負の数なら符号の分の解答欄があるはず)正の整数と決めつけることになろう。ただ、こういう姿勢が染み付くと、大学に入ってから苦しむことになるので、本番以外では丁寧に分析して解く癖を身につけておくべきだ。ただ、問題には「xの絶対値が最小」という具合に、負の数を考えないように釘を刺している点には注意したい。まあ、受験上でこういう微妙な表現に気づくのは至難の技だとは思う。「試験慣れ」というのはこういうところであって、試験の点が高いことが学力の高さを意味するとは限らない、というのがよく出る場所だろう。(ボーアはこういう問題が得意だろうが、アインシュタインは苦手だろう。)
さて、|x|に着目するので |x|=0,1,2あたりを最初に当てはめて「実験的に」考えて見よう。このように「例題」を使って一般化を試みることは、数学者もよく使う方法だ。恥ずかしいことはひとつもない。まずx=0は当てはまらないことがすぐにわかる。つぎにx=1とx=-1を考えてみよう。x=-1の場合、\(7y=-144-1=-145=5\cdot 29\)であるから、整数解yは見つからない。29は素数である。x=1の場合は、\(7y = 144-1 =143 = 11\cdot 13\)となり、やはり7以外の素数同士の積が素数7の倍数となることはないので、これも場外される。x=-2がうまくいかないのは省略するとして、x=2の場合を試してみる。実はこれが正解になっている。\[ 7y = 144\cdot 2 -1 = 287 = 7\cdot 41\]
(x,y)=(2,41)が正解である。
次は、上の線形関係式を満たす一般の(x,y)の形を見つける問題だが、出題者の好意により\[x=mk+2, \quad y = nk + 41\]という形が与えられているから、これを最大限に利用しよう。k=0の場合が、上で求めた場合(x,y)=(2,41)に相当する。問題になっているのは整数m,nの値を決めることである。まずは、上の形は線形関係に代入する。定数部分の差が1となるのは(上の問題で)わかっているので、mとnが満たすべき関係として\(144m-7n=0\)を得る。因数分解の結果を用いると\[ n = \frac{2^4\cdot 3^2}{7}m\]となるが、nが整数となるためにはmは7の倍数である必要がある。よってm=7とおくと、n=144が自動的に決まる。(m=14とした場合は、k’=2kとくり込むことができる。)まとめると、\[ x=7k+2, \quad y=144k+41\]が 答えである。
(3)は(1)と(2)の結果を応用する問題であり、とても面白い問題だと思う。144の倍数というのは\(144k, \quad x=1,2,3,\cdots \)だから、\(2^4\cdot 3^2 k\)の構造を考えるとよい。(1)の結果として、144の約数の数は15個なので、kの部分をうまく選んで約数が18になるようにすればよい。しかし、問題文で「7で割ったら余りが1」でもある、という制限がつく。これは(2)の\(144x-7y=1\)を書き換えた\(144x = 7y+1\)と同じ意味である。つまり、\(k=1,2,3,\cdots\)と選ぶのではなく、144xに対して、\(x=7k+2, k=0,1,2,\cdots\)という具合に選んでいくのである。ここでも「実験」を行ってみる。k=0のときx=2であり、このとき\(144x = 2^5\cdot 3^2\)という構造を持つ。このときの約数の数は\(6\times 3 = 18\)となって題意に合致する。すなわち、\(144\times 2\)が「約数を18個持つ最小のもの」である。
同じような手順で、次は約数の数が30個のものを探す。k=1,2,3と試していくと、k=3のときその条件が満たされることが簡単に確認できる。このとき\(x=7\cdot 3 + 2 = 23\)であり、\(114\cdot 23 = 2^4\cdot 3^2 \cdot 23\)である。23は素数であるから、約数の数は\(5\times 3\times 2=30\)となるのである。
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