2018年1月29日月曜日

センター試験の数学2018:幾何の問題(台形の成立条件)

次に第二問[1]の幾何の問題に行ってみよう。四角形の問題であった。AB=5, BC=9, CD=3, AC=6という値が与えられている。この条件で位置が決まるのはA,B,Cの3点であり、点Dは「Cを中心とする半径3の円周上」までは限定できるが、この円周上のどこにあるかは指定できない。それが問題の中心点になっている。

いつものようにpostscriptで作図してみる。まずは座標原点 をAにする。すなわち、A(0,0)とする。次に、Bをx軸に乗せ、B(5,0)とする。ここまでは任意に決めることができる。次に点Cの座標だが、Aを中心とする半径6の円と、Bを中心とする半径9の円の交点として計算できる。すなわち、\[ x^2 + y ^2 = 6^2 \ldots (1), \\ (x-5)^2 + y^2 = 9^2 \ldots (2)\] という連立方程式の解を求めればよい。計算すると、\( C(-2, 4\sqrt{2}) \)を得る。点DはCD=3とだけ指定されているので、Cを中心とする半径3の円周上のどこかにある。すなわち\( D(3\cos\phi-2, 3\sin\phi + 4\sqrt{2})\)となるが、\(\phi\)の値は決められない。

以上の結果をまとめてpostscriptで描いた図が下図である。

\(\phi=240^\circ\)とした場合
この問題の要点は、「四角形ABCDが「台形」となるには、点Dをどこにおけばよいか」という問題である。台形とは、向かい合う辺同士が平行な四角形のことだから、AB//CDの場合と、BC//ADの場合の2つの場合が考えられる。結論を先にいうと、前者の場合は簡単に答えがみつかるが、後者の場合は不可能である。

まずはAB//CDの場合から考えよう。Dを\(\phi=180^\circ\)の場所に置いたときに相当する。この場合を図に表すと、次のようになる。

\(\phi=180^\circ\)とした場合

このときDの座標は\( D(3\cos180^\circ-2, 3\sin180^\circ + 4\sqrt{2})=(-5, 4\sqrt{2})\)となる。対角線BDの長さはピタゴラスの定理を使って\[BD=\sqrt{(-5-5)^2+(4\sqrt{2}-0)^2} = \sqrt{132} = 2\sqrt{33}\]となる。

次にBC//ADの場合を考えてみる。直線CBの傾きは\[\frac{0-4\sqrt{2}}{5-(-5)}=\frac{-2\sqrt{2}}{5}\]であるが、AD//BCとなるためには直線ADの傾きがこの値に等しくなる必要がある。すなわち、\[ \frac{0-(3\sin\phi + 4\sqrt{2})}{0-(3\cos\phi-2)} = \frac{3\sin\phi + 4\sqrt{2}}{3\cos\phi-2} = \frac{-2\sqrt{2}}{5}\]を満たす\(\phi\)を求めることになる。この条件を整理すると、\[15\sin\phi + 6\sqrt{2}\cos\phi = -16\sqrt{2}\]となる。\(\sin^2\phi + \cos^2\phi = 1\)と組み合わせることで\(\phi\)を求めることができるが、これは連立方程式\[ y^2 + x^2 = 1 \\ 15y + 6\sqrt{2}x = -16\sqrt{2}\]の解の条件を調べることに相当する。ただし、\(x=\cos\phi, y=\sin\phi\)とおいた。

xを消去し、yについてまとめると2次式を得る(yを消去し、xについての2次式にしてもよい)。\[\frac{33}{8}y^2 + \frac{20\sqrt{2}}{3}y+\frac{55}{9}=0\] この判別式が負にになれば、実数解が存在しないということになるので、BCに平行な直線ADは円Cと交点を持たないことが証明できる。判別式を計算してみると\[D'=(\frac{10\sqrt{2}}{3})^2-\frac{33}{8}\frac{55}{9}=\frac{1}{8\cdot 9}\left(2^4\cdot 10^2 - 3\cdot 5 \cdot 11^2\right)\] ここで\(11^2 = (10+1)^2 = 10^2 + 20 + 1\)であることを利用すると
\[2^4\cdot 10^2 - 15(10^2 + 20 + 1) = (16-15)10^2 - 3\cdot 5\cdot 20 - 15 = -2\cdot 10^2 - 15 < 0\]となって判別式が負値をとることがわかる。

試験問題では、角度\(\angle ABC \equiv \theta\)についての\(\sin\theta, \cos\theta\)を計算させ、直線BCとADの距離が、円Cの半径(CD=3)よりも大きいことを調べさせている。余弦定理を使えば、簡単に\(\cos\theta = \frac{7}{9}, \sin\theta = \frac{4\sqrt{2}}{9}\)であることがわかる。点Aから直線BCに下ろした垂線の長さが、ADとBCが平行線となる場合の距離に相当するが、これは\(AB\sin\theta=\frac{20\sqrt{2}}{9} > 3=CD\)である。

ちなみに、直線ADがもっとも直線BCから「離れる」のは(つまり、直線ADが直線BCの平行線にもっとも近づくのは)、直線ADが円Cの接線となる場合である。AC=6, CD=3,\(\angle ADC = 90^\circ\)なので、この時三角形ACDは正三角形を半分に切った三角形となる。つまり、\(\angle DCA = 60^\circ, \angle CAD = 30^\circ\)である。これらの性質を用いて、点Dの座標を計算したり、平行条件を調べたりするのも興味深い問題であるが、それは後日の楽しみにとっておくことにしよう。

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