2013年3月17日日曜日

円錐曲線とパンスターズ彗星

パンスターズ彗星が3月10日に近日点通過し、光度を上げながら、北半球の夕空に姿を見せるようになった。とはいえ、思いの外、暗くて小さな彗星となり、その観測には苦労している人が多いのではないだろうか?私も一週間チャレンジし続け、ようやく昨日撮影することができた。とはいえ、自力ではとうてい発見できなかっただろう。最後は、隣りで観測している人に場所を聞いたのだった...

望遠レンズで撮影した6枚の画像を
gimpを用いて加算合成という方法で画像処理した結果

科学の研究は最初がとても難しい。だから最初にその頂に到達した人を、心の底から褒め讃える習慣がある。ノーベル賞もそのひとつだろう。

さて、天文学科に行くにせよ、宇宙工学を専攻するにせよ、天体/人工衛星の軌道計算に、円錐曲線は欠かせない。

軌道を観測した結果、今回のパンスターズ彗星の離心率は1を越えているという。これは双曲線軌道に対応している。この観測通りであるのなら、パンスターズ彗星は二度と太陽系には戻って来ない。

ちなみに、地球の離心率は0.0167...と極めて0に近い。これは地球の軌道が円軌道(離心率=0)に非常に近い楕円軌道であることを意味する。ちなみに、火星の軌道の離心率は0.1弱で、地球の離心率よりも一桁大きい。この「大きな」離心率のため(といっても人間の目には円軌道に見えるかも)、ケプラーは火星の軌道計算で非常に苦しむはめになったのだ。

一方、彗星の代表格であるハレー彗星の軌道の離心率は、0.967...と極めて1に近く、その楕円軌道はかなり円形からかけ離れ歪んでいる。離心率が1の円錐曲線は、実は、放物線つまり二次関数だ。ハレー彗星の軌道はむしろ放物線に近いのだ。

以上のように、離心率が1に等しいか、1より大きいか、それとも1より小さいかによって、円錐曲線は3つに分類される。対応する曲線は、順に、放物線、双曲線、そして楕円となる。円は、楕円の特別な場合で、離心率が0の軌道だ。

物理学の観点からすると、高校や中学の数学で、放物線を含むこれらの円錐曲線を一生懸命に学ぶ一つの理由は、重力に従って運動する物体の軌道は必ず円錐曲線のどれかになるからだ。

まずは手始めに放物線の問題からいってみよう。東大理系(2002)の問題。「非常に簡単」と評されている問題だが、彗星の衝突、あるいは彗星と人工衛星をランデブーさせる問題とよみ代えれば、それなりに楽しめるかも。2つの放物線、
y= 2√3 (x - cosθ)2 + sinθ
y=-2√3 (x + cosθ)2 - sinθ
が与えられていて、これが2点で交わるための、θの条件を求めよというもの。

問題を解くだけなら、連立させてyを消去。xの二次式になるので、判別式を確認して、実数解が2つになる場合を調べればよい。

問題を解く前に、上の放物線の状況について確認しておく。すでに、標準形になっているので、すぐに前者はy=2√3 x2をv=(cosθ,sinθ)方向に平行移動したもの、後者はy=-2√3 x2をv=(-cosθ,-sinθ)方向に移動したものであることがわかる。放物線の極値点は、両者共に単位円(x2+y2=1)の上にあり、2つの放物線は原点に対して点対称の関係にある。これは物理学でいうパリティ変換と同じだから、(x,y) → (-x,-y)という変換に対応する。これは、一次変換であり、かつ角度πの回転変換になっていることはすぐに確認できる。すなわち、

回転変換はユニタリ変換だということは前に見た。実際、行列式は(-1)×(-1)=1となる。三次元のパリティ変換は行列式が-1になるが、二次元の場合は1になる。つまり、二次元のパリティ変換は回転変換と等価で、連続変換(微小回転の繰り返し)で実現できる。一方、三次元のパリティ変換は、回転変換と行列式の正負が異なるため、連続変換(微小回転の繰り返し)では実現できない。


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